モラルハザード

先週末ワシントンでG20財務相会議が行われた。

G7ならまだしも20か国が集まって議論しても何が決まる
わけでもないが、ともかく集まることに意義があると言うことだ。

目下の世界の経済状況については、世界7地域が低金利、低物価の恩恵で
同時成長しており、この好機に構造改革を進め経済の効率化を図ることが
確認された。

また欧米の中央銀行が低金利からの出口戦略を進めている中で
金利の上昇が新興国から米国への資本流出を招くことで新たな
世界経済への不安材料として指摘された。



国際金融協会(IIF)の調査によると過去10年において米中はじめ
各国の公的・民間債務は1.5倍に膨らんでいるとされ、どの国も
財政を切り詰めるのに難儀しているのが実情だ。

したがってこの会議ではこれまで財政再建問題に関する危機意識が
共有されてきたが、2010年のG20トロントサミットにおいて各国は
3年以内に赤字半減を実現することを目標として掲げた。

その時日本だけは目標達成を無理とし、その代わりに基礎的財政収支
(プライマリーバランス)を10年後に黒字化することでお目こぼしを
してもらった。

それがここにきて2020年の目標達成は不可能として国際公約の
取り下げに至って面目を失ったが、各国から非難が出なくて
(麻生財務相が欠席する中で)黒田総裁は胸をなでおろしたということだ。



世界的に財政悪化が進むとはいえGDPの250%に接近する日本は断然
際立っているが、財政赤字圧縮に向けての消費増税を2度も先延ばししてきた。

2019年秋にこそ3度目の正直で上げることになっているが、今や
自民党は選挙公約としてその使途を変更し財政穴埋めに使うのではなく
教育補償と美名に包みつつバラマキをすることとしている。

これに対して野党と言えば、反対するどころか増税を凍結・中止を
というのだから日本で財政再建など永遠に不可能ということだろう。

こんなに右も左も増税中止の声が高まってくると、財務省を筆頭に
財政再建を真面目に議論することなどバカバカしくなってくるのが人情だ。

これぞまさにモラルハザードだ。



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ケーキセット

堤義明氏の経営する国土計画が破綻して15年、
プリンスホテルは経営再建を進めてきた。

そのブランドイメージは一時地に落ちたが、その挽回を図るために
ホテルを3分類して最上級を「ザ・プリンス」と改名、そして
第2分類はそれなりに、そして第3分類は大衆化を図ってきたのだが。

その旗艦店のひとつである芝公園内の「ザ・プリンスパークタワー東京」に
行ってみた。



足を運んだ目的は近くでの用事のついでにその建物を観ることと、軽井沢で貯めたポイントでケーキセットを食べること。

大きなガラスで囲まれたラウンジは、ピラミットの斜面か大阪城の
お堀を彷彿させる石垣に直面している。

その斜面を流れ落ちる水はそれほどの水量は無く、茨城県の袋田の滝を
思わせる程度だが、東京タワーを借景にしておりなかなかのもの。

ともかくマンゴ・ケーキを食べながら、しばらくあの丹下健三の息子・
丹下憲孝氏の設計した現代建築の粋を楽しんだ。



このホテルは比較的新しくまた空いていてとても快適だったが、果たして
全国津々浦々に展開するプリンスブランドは回復しているのだろうか?

ペニンシュラ、マンダリンなどの外資、そしてオオクラや
帝国ホテルと比べるとやはり落ちるのか?

難しいことは脇に置いておいて、とりあえずたまに出かける都会のオアシスとしての役割は、
周囲が緑の公園に囲まれているだけに十分果たしてくれそうだ。


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適温相場

2008年のリーマンショックから9年が経過したが、その間NY株価は
6千ドル台から上昇を続け、目下22千ドルと史上最高値水準に達している。

その背景として、アップルやFANGつまりフェースブック、アマゾン、ネットフリックス、
グーグルに代表されるIT関連株が牽引していることがある。

同時にFEDが今ひとつ経済の先行きに確信を持てず引き締めの積極化を図る
ようには見えないことが、現在の「適温相場」と言った過熱感もなく不況感もない
ほどほどの状態がもたらされることになっている。

とはいえすでにS&P500でも株価収益率(PER)が25倍を超えるなど、
バブル警戒域に入っているのも事実で、「適温相場」のいごこちの
良さの終わりに備える必要も感じられるところである。



FEDが景気に確信を持てない一因は、労働賃金が上がらないことで
それが低インフレをもたらしていることから、緩和傾向を脱しきれない。

すでに昨年末から3度にわたり政策金利を引き上げたが、今後については
FED内部で意見の対立が激しい。

現在の米国の雇用状況は改善傾向を辿り、一時の10%台から4.3%と
ほとんど完全雇用状態に近い低失業率にある。

実際労働者不足が表面化し賃金が上昇してもおかしくないところだが、
実態は職場を離れていた人が労働参加を進めているとか、様々
な理由が考えられるが、なかなかその原因に辿りつけないでいる。

つまり失業率とインフレ率は本来トレードオフの関係にあるはずだが、
このフィリップ曲線の下方での水平化が定着してしまったようで
FEDもその対策に苦慮していると言うことだ。

FEDの資産がすでに4.5兆ドルにも達し、さらに債券バブル、資産バブルの
懸念が生じる現状を踏まえるならば、FEDは量的金融緩和から最終的な
出口政策を進めるしかないはずなのだが。



このようにFEDの慎重かつ様子見的な姿勢を好機としてとらえ、
またトランプノミクスへの期待感もいまだ捨てきれないだけに、
まだまだ居心地の良い適温相場で稼ごうとの思惑が市場を支配している。

とはいえ適温相場の語源である英国の童話「ゴルディロックス」の話は、
クマの登場で逃げ出すところで終わる。

つまりクマの留守の間に、ほどほどの熱さのスープを飲み、ほどほどの大きさの椅子、
そしてほどほどの硬さのベッドを楽しんでいた少女ゴルディロックスのお話は
最後に大変なトラブルに遭遇するのだ。

それでは「適温相場」の結末はいかに?

早ければ9月にはFEDが資産圧縮を始める可能性が高く
それが適温相場に激震を与えるかも知れない。

そろそろベア(=クマ)相場の出現に要注意と言うことだ。




100日計画

習近平国家主席がトランプ大統領の別荘を訪問して
蜜月が演出されて以来100日が経過した。

トランプ大統領は選挙期間中から中国批判を高めていたことから
経済戦争突入も予想されていたものの、この首脳会談で北朝鮮問題と
経済対話がディールされ両国関係はソフト路線が維持されてきた。

特に経済面では「米中100日計画」を進めることで米中貿易不均衡是正を
目指すことに両国が尽力することになっていたのだが。



この間の中国は北朝鮮に対し制裁どころか石炭のみならず
鉄鉱石の輸入も拡大するなど相変わらず同国の経済支援を続けてきた。

また経済問題については5月に米国産牛肉の解禁など輸入拡大に向け
多少の進展があったものの、3500億ドル(40兆円)の米国貿易赤字の
改善に資するとは思えない効果に留まるのも事実。

ということで、「100日計画」の総括と今後の「1年計画」に向けて
米中包括経済対話が昨日(19日)にワシントンで行われた。

何が出るのかなと思っていたが、結局共同記者会見も行われず、
ほぼ決裂状態になった模様だ。



それでなくともトランプ・習両首脳のイライラぶりが伝わって
きていただけに、今後は米国と中国の関係は一気に悪化する可能性が高まる。

10月に行われる見込みの5年に一度の共産党大会まで中国も
問題を先送りをしたいとの意向を強めていただけに、今後の
二国間関係は一気にヒートアップする可能性が強い。

特に鉄鋼とハイテクが議論の中心になる見込みだが、中国からの
鉄鋼製品の輸入制限に向け輸入関税や割り当てを行う見込みでもある。

米中関係はニクソンの訪中以来45年、和解と対決を繰り返してきたが
いよいよ米中関係は対決へと突入する可能性が大きい。



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エトナ山

週末シチリア島タオルミーナでG7サミットがあった。

各国首脳がエトナ山と蒼い海を背景に古代劇場に設営された
舞台に登場する映像が流れついつい見入ってしまった。

かつて女流画家の三岸節子はこの風景に魅了されて
この地に住み着き、何枚もの作品を残した。

その色合いはいまいちでお気に入りとはいかないが、
十年ほど前にその風景に誘われてこの地に足を運んだ。



今回はファーストレテイたちがエトナ山の遊覧飛行を楽しんでいたが、
やはりベスビオス山と共にその山の風景は南イタリアを代表するものだ。

以前京都大学の地震学の先生の講演を聞いたことがあったが、
この人はエトナ山の火山活動の研究を生涯テーマとしているとのことだった。

何とうらやましいことかと思ったが、やはりタオルミーナは
日本が洞爺湖や志摩を選んだようにイタリアがサミットの地とした
ことが頷ける。



ところで肝心のサミットはと言えば、予想通りとはいえ「自国第一主義」を
掲げるトランプ大統領と他の6首脳との間での意見の食い違いが露呈した。

地球温暖化対策は明らかに意見不一致で、米国は今週中にも
パリ協定からの離脱の表明を匂わせている。

また通商問題についても報復関税の可能性に言及したりと
保護主義への傾斜を強めメルケル首相もお手上げ状態。

1976年にランブイエで始まったサミットも、国際情勢とくに
米国の変質により大きく様相が変わってきた。

トランプ政権が続く4年で米国はメガFTAの旗を降ろして
二国間FTAへと舵を切り、そして米国第一主義を前面に
押し出してくるのはもはや回避できなくなった。



プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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