エトナ山

週末シチリア島タオルミーナでG7サミットがあった。

各国首脳がエトナ山と蒼い海を背景に古代劇場に設営された
舞台に登場する映像が流れついつい見入ってしまった。

かつて女流画家の三岸節子はこの風景に魅了されて
この地に住み着き、何枚もの作品を残した。

その色合いはいまいちでお気に入りとはいかないが、
十年ほど前にその風景に誘われてこの地に足を運んだ。



今回はファーストレテイたちがエトナ山の遊覧飛行を楽しんでいたが、
やはりベスビオス山と共にその山の風景は南イタリアを代表するものだ。

以前京都大学の地震学の先生の講演を聞いたことがあったが、
この人はエトナ山の火山活動の研究を生涯テーマとしているとのことだった。

何とうらやましいことかと思ったが、やはりタオルミーナは
日本が洞爺湖や志摩を選んだようにイタリアがサミットの地とした
ことが頷ける。



ところで肝心のサミットはと言えば、予想通りとはいえ「自国第一主義」を
掲げるトランプ大統領と他の6首脳との間での意見の食い違いが露呈した。

地球温暖化対策は明らかに意見不一致で、米国は今週中にも
パリ協定からの離脱の表明を匂わせている。

また通商問題についても報復関税の可能性に言及したりと
保護主義への傾斜を強めメルケル首相もお手上げ状態。

1976年にランブイエで始まったサミットも、国際情勢とくに
米国の変質により大きく様相が変わってきた。

トランプ政権が続く4年で米国はメガFTAの旗を降ろして
二国間FTAへと舵を切り、そして米国第一主義を前面に
押し出してくるのはもはや回避できなくなった。



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ヤマト

今時コンビニと宅配業者はブラック企業の
代名詞になったようだ。

ヤマト運輸では長らく残業代が支払われずに来たが、
ようやく解決のめどがたった。

一方再配達が増加する中で配送員の勤務実態はより厳しくなり
企業としても増収減益の傾向が強まる。

従って27年ぶりの値上げもやむ無しと言うことだろうか。

因みに米国ではこの間50%も値上がりしているのだから、
デフレ日本の象徴とも言えそうだ。



昨今はアマゾンはじめ通販の拡大で宅配の利ざやは薄くなる一方で、
配達個数は40億個に達して遅配が常態化している。

景気回復の実感は乏しいが、有効求人倍率もいつの間にやら1.50に接近し
この業界はじめ3Kなどの職種で人手不足が目立っている。

実際その利便性は誰もが認めネット通販なくしては
生活が成り立たなくなっているのは確かだ。

これからもそのニーズは拡大して行くだろう。



一方中国ではアリババなどの通販が急拡大し、一年の物流数は300億個に達し、
遅配が深刻化しているのは日本以上だ。

西安から北京までの2000キロは2日だが、北京の配送拠点から数百メートルの届け先まで
3日かかると言われるように、大都市での滞留が問題視されている。

実際農村部からの出稼ぎ労働者が枯渇した今
都市における労働人口の不足が目立つ故だ。

中国の場合、国土が広くて買い物のネット依存が高まるのは自然の流れで
物流は今後の中国経済の発展に欠かすことのできない
要素ということだ。

通販の増大と人手不足はいたちごっこで、今後より深刻化する見込みだ。


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駒場にて

学生時代の友人で東大教授の荒巻健二さんの
退官講義があり駒場キャンパスに出掛けた。

荒巻さんは大蔵省に入りIMFのエコノミストとしてOECDへの出張の際に
パリで再会し、以来交遊を続けてきた。

東大で教えることになって専門とされる国際経済論や国際関係論
について時折お酒を飲みながら教えを乞うてきた。



と言うことで一緒に居酒屋ゼミ?で学んできた武邑くんと共に、
本日は100人ほどの学生たちに混じりノートを取った。

「グローバリゼーションの意味」について聴講したが、
学生評によれば先生の講義の難解度は学内で2番目らしく、
スピードも速くハイレベルのものだった。

やはり行政官として鍛えられ、さらに学者としてその道を究めた人の
職業としての学問への姿勢は厳しかった。

同時に相場本位かつ皮相的になりがちな筆者には、
論理的かつ学問的なアプローチを学ぶ機会となった。





講義の後は駒場の住宅街の一角にあるイタリア料理「ペスカビアンカ」で
送別会が行われ、奥様とお嬢様も出席されて和気あいあいと歓談した。

このレストランはランチにきたことがあったが
牡蠣と白ワインが美味しいと言われる通りで、おすすめしておきます。

空気は未だ冷たいものの楽しい春宵の一刻となった。

ps

今後は東京女子大で教鞭をとられるとのこと。

孫娘たちがお世話になるかも知れず、
10年後まで頑張ってもらいたい。




日比谷公園

週末ワシントンで日米首脳会談が行われ、
さらにフロリダで両首脳はアーニー・エルスを交えてゴルフをした。

二人のゴルフの腕前は、大統領はドライバー280ヤード
ベスト66、ホールインワン5回とプロ並みだ。
(とはいえグリーン回りは何でもOKとの話もある。)

一方首相はベスト89らしく、どうやらアベレージは90台後半当たりのようだ。

まさかドル高・ドル安のどちらかを賭けたわけではないにしても、
日米のゴルフ対決は明らかに米国の圧勝となっただろう。



トランプ大統領の通商そして為替問題についての認識は、
日米構造協議で不公平是正に向けて日本たたきが真っ盛り
だった1980年代に作られた模様だ。

実際当時も今も日本の国際収支構造は黒字で円安ではあるが
内容が大きく変わっている点は見逃せない。

2016年の貿易統計では、経常黒字(20.5兆円)、
うち貿易黒字(5.6兆円)および旅行収支黒字(1.3兆円)
第一次所得収支黒字(18.1兆円)となっている。

つまり80年代は経常収支の大半は巨額の貿易黒字が占め、
所得収支はほぼゼロ近辺にあった。

その後円高圧力を受けて海外などへの生産拠点の移転など
海外投資が増えるにつれ貿易収支黒字は圧縮された。

一方海外投資の増大により金利や配当収入が大きくなり、
これが日本の経常収支黒字の大部分を占めるように
なったことが特徴的である。



このようにヒト、モノの流れを含めて日本の経済構造は大きく
変化しているのだが、大統領の円安批判そして日銀の
金融政策批判が今後収まるとも思えない。

これから麻生副総理とペンス副大統領をヘッドとする
経済対話が進められる予定だ。

ただ、自民党の二階幹事長と並び麻生財務相も
77歳で年齢的な衰えが目立つと言われている。

ハードネゴで米国を説得できるのか、
日米関係の先行きは楽観できない。


PS.

週末結婚式・披露宴が日比谷公園内の
レストランであった。

屋外での人前結婚式は初めてだったが、
2月にしては暖かく青空の下快適だった。

続いて小鳩のローストやヴィンテージワインを味わいつつ、
若い二人の門出を祝った。


(日比谷パレス)




シムズ理論

アベノミクスが誕生し、さらに黒田日銀総裁が
量的緩和策で後押しを始めて4年が経過した。

2%を目標に掲げたインフレ率が依然マイナス近辺を低迷しているように、
もはや金融政策の限界は明らかだ。

実際マイナス金利が導入されて1年が経ったが、その効果が見えない一方で、
金融機関は逆ザヤに苦しみ、また預金者の負担が大きい。

結局黒田バズーカは国内経済の活性化につながらず
通貨安による株高を狙ったものでしかなかったことは明白で、
トランプ政権に非難されるのも無理からぬところである。



もはやアベノミクスという社会実験は終わっており、
来年4月に迫った黒田総裁の後任問題が語られる。

もちろん続投もありうるが候補者には、森信親金融庁長官や
本田悦郎スイス大使(前内閣参与)の名前が上がる。

誰がなるにしても引き続きアベノミクスを金融面からサポートするのだろう。

しかしアベノミクスの理論的支柱であった浜田内閣官房参与は
すでに自分の理論の破綻を吐露した。

同時にノーベル経済学賞の受賞者クリストファー・シムズ氏が提唱する
シムズ理論つまり「物価水準の財政理論」(FTPL)という経済理論に
目から鱗が落ちた語っているのだ。

このFTPL理論は動学マクロ経済学の難解な理論で、
筆者は当然としても理解している人はほとんどいないのが現実のようだ。



とはいえシムズ理論は、金融政策では出来なかったインフレ率を、
財政政策の出動により引き上げることができると言う。

つまり日本経済に当てはめれば「消費税の増税を延期せよ」ということになり、
霞が関のエコノミストが飛びついたのもうなずけるところだ。

つまり「インフレを起こして政府債務を踏み倒す」というインフレ税と
同様のものであり、国民の負担で財政赤字の帳消しを図ろうという
政府に都合の良い理論なのだ。

換言すれば、政府が財政再建を
放棄することがその出発点になる。

とするとGDPの250%もの財政赤字を有する日本はデフォルトへ
一直線となるが、
同時にハイパーインフレのリスクも強まる。

FTPL理論の有効性は分からないが、消費税増税を回避する方便に
この理論が都合よく使われそうな状況にあると言うことだけは確かなようだ。



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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