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サウジ・ショック

サウジアラビアの反体制派記者殺害事件は、フレデリック・フォーサイスの
スパイ小説を彷彿させるものだ。

限定的ではあるもののこの事件を引き金にした「サウジ・ショック」は
米国の政権そして世論を揺らし、金融市場にリスクオフの流れをもたらしている。

ワシントンポスト紙のカショギ記者はサウジ政府の弾圧下
表現の自由を求めてきただけに同紙が抗議の論調を強めるのも当然だ。

事件はイスタンブールのサウジ領事館で起こったが事件そのものは
ムハンマド皇太子の側近による犯行だったことまで明らかになっている。



ことのほか事件の詳細が報じられているのは、被害者が所有していた
アップル・ウオッチの録音機能のお陰。

いきさつについてトルコの警察当局が詳細に公表しているが
その背景にアップルウオッチの録音に加えてトルコ=米国間関係の
修復を願うトルコ政府の強い意気込みがあるといえよう。

カショギ記者はこの時計の録音機能をONにして事件に臨み、
その録音内容を婚約者が保有するiPhoneへ転送されていた模様だ。

それにしてもサウジはトランプ大統領にとり不動産ビジネス上の
お得意様であり、またイランとの対決構造の中で重要な同盟国である。

しかし今回の犯罪により米国では反サウジの気運が盛り上がっており、
もはやトランプ政権もサウジをかばいきれなくなったと言うところだろう。



この事件は米国政治はもちろん中東情勢へも微妙に影響しはじめた。

すでにムハンマド皇太子主催の投資会議にJPモルガンのダイモンCEO
さらにはムニューシン米財務長官も欠席することになった。

このように米国サウジ間の信頼が薄れる一方、
ここでポイントを上げているのがトルコだ。

これまでクーデターの嫌疑で米人牧師を拘束していたが、
過日解放し関係が好転し始めたところ。

その拘束のせいで今夏トルコショックが金融市場で起きていたが、
ここでトルコが捜査協力しさらに中東和平への貢献をアピールしている。

あらためて中東和平は砂上の楼閣とも言えるほどに微妙かつ繊細で、
明日何が起きどうなっているのか分からない。


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サウジ

建国85年のサウジアラビアでは内政・外交両面で緊張が
高まっており、今後の中東情勢流動化の震源地になる可能性が高まっている。

そもそもサウジにおいては人口増大、石油価格下落で経済状況が
悪化していることに危機感を強く感じているのが、32歳のムハンマド皇太子。

就任以来、脱石油を目指すなどトップダウンで一気に国家改造を進めようと
サウジアラムコのIPOを進めている。

その改革を進める中で反対勢力と言われる王子11人はじめ、閣僚、
実業家など200人ほどを過日汚職の嫌疑で拘束した。

実際はリヤドのリッツカールトンという拘置所とは思えないところに
幽閉したと聞けばさすがにお金持ちの国だと感心するばかり。

とはいえサウジの国内の動きは新たな紛争の火種になる可能性が大きい。



サウジは初代国王アブドル・アジズ国王以降の2代目から現在の7代目
サルマン国王(25番目の王子)までその子息にあたる第2世代の
王子たちが継承してきた。

現在のサルマン国王が即位したのは2年前だがすでに81歳。

したがって国政は自らの(何番目か分からないが)息子ムハンマド
皇太子に任せており、さらに早々と第3世代のトップを切ってこの
皇太子に国王を譲る腹積もりだとされる。

このように王子と呼ばれる人は数百人もおり、また王族は15000人に
及ぶと言われるだけに、その王位継承や国家経営などには様々な
難しいことがあるだろう。



ところで目下の中東情勢はIS問題がほぼ終息して一段落したものの、
対IS作戦でシリア、イラク、さらにはヒズボラなどと連帯を深めたシーア派大国の
イランの存在感が巨大化した。

スンニ派の代表であるサウジはこの状況に緊張を高めていることから
イランの影響を受けるレバノンやイエメンさらにはカタールなどとの
外交関係の対立が表面化している。

2017年は北朝鮮リスクに明け暮れたが、2018年は中東における
地政学リスクが一気にクローズアップされることになりそうだ。


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公共の迷惑

シリアのヌスラ戦線に拘束されている元信濃毎日記者の
安田純平さんの映像が流れた。

ヌスラ戦線はアルカイーダ系といわれ、ISのライバルとして
テロリストのリクルートや資金調達面で覇を競っている。

テロ行為の成果面でどちらかと言えば劣勢に立っており、
目下は身代金目的の誘拐に力点を置いているとされている。

したがってヌスラは拘束歴3度の安田さんについて
政府などに身代金の要求を行っている模様だ。



安田さんのような戦場ジャーナリストは我々一般人にはなじみは薄いが、
戦場ジャーナリズムという報道分野は確立されているようだ。

そしてこのようなジャーナリズムは戦乱地域での女性・子供など弱者が
虐げられている実情などを報道することを第一義としているようだ。

米国ではこのジャーナリズムの意義について国務省も
「公共の利益」や「国防への貢献」から積極的に評価している。

しかし日本政府・日本人にとっては「公共の迷惑」と言った風情が漂う。

なるほどかかるジャーナリストが、人質になる可能性を含めて考えれば、
その志が高いとしても「公共の迷惑」的な存在と考えてしまう。



安田さんの公共への利益がどの程度のものかわからないが、
日本政府は目下安田さんの解放に向けて尽力している。

その本音は「公共の迷惑」かも知れないが、
建前的には国民の生存を守るとの一点において国家として
責務を果たしていると評価できよう。

したがっていくら保育園に落ちて腹立たしい気分であったとしても
「日本死ね」などど自らが依って立つ
国家を憂さ晴らし的に侮辱する行為は厳に慎むべきではないだろうか。


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シリアの混迷

ロシア軍機がシリアとの国境付近でトルコ軍に撃墜された。

本年9月からロシアがシリア空爆を始めたが何度もトルコ領空を
侵犯しており、遂に起こるべくして起こったというところだ。

ロシア側は領空から1キロほど離れていたと主張しているが、
この水掛け論は結論を見る事はないだろう。



ロシアのシリア空爆は、建前としてはISを狙ったものとされているが、
本音は親ロシア的なアサド政権を支援する為に反政府勢力への攻撃に
主眼がおかれており疑惑の目を向けられていた。

また空爆地域がトルコとの国境でトルコ系のトルクメン人に
照準を合わせているとしてトルコ・ロシア間での対立が続いていた。

一方トルコはイランやクルド人勢力を敵対視する一方で、
NATO(北大西洋条約機構)の加盟国であり、ロシアは手を出せないと
踏んでいるふしもあり、今回ロシアに一撃を加えたと思われる。



これまではISに対し有志連合(米国はじめトルコなど中東各国)、
フランス、ロシアなどにより空爆が進められてきたが、それぞれの足並みは揃わない。

またパリ同時多発テロを受けてフランス・オランド大統領はこの間、
オバマ米大統領、メルケル独首相そしてプーチン露大統領と会い
欧米ロ大連合による対IS包囲網の強化を図ってきた。

とはいえそれぞれの国のアサド政権への距離感と
利害が異なっておりフランスの思惑通りに進むのは難しい。

もともと中東の混乱の根源は100年前の第一次世界大戦中に起きた
中東の石油利権をめぐる英国の三枚舌外交のせい。

その歴史を眺めれば、複雑に絡まった糸がほどけるように
事態が解決へと進む可能性は期待できない。



注)英国の三枚舌外交

オスマン帝国崩壊後の国境線引について、英国が秘密裏に
次の3つの約束をしていた。

それぞれは矛盾はしていない様に見えるが、この100年
この地域には疑心暗鬼が渦巻く原因となった。

1.フサイン=マクマホン協定

1915年にイギリスが、オスマン帝国の支配下にあった
アラブ地域の独立と、アラブ人のパレスチナでの居住を認めた協定。

2.バルフォア宣言、

1917年11月2日に、英外務大臣アーサー・バルフォアが、英国の
ユダヤ系貴族院議員である第2代ロスチャイルド男爵ライオネル・ウォルター・
ロスチャイルドに対して送った書簡で表明された、英国政府のシオニズム支持表明。

3.サイクス・ピコ協定

1916年第一次世界大戦後のオスマン帝国における勢力分割を
連合国のイギリス・フランス・ロシアが約した秘密協定。




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カルタゴ

先日チュニジアの首都チュニスにあるバルド美術館で3人の
日本人を含め20人もの観光客がテロに遭い死亡した。

ニュースは「アラブの春」、また「IS」の2文字ばかりが強調されて、
一言も「カルタゴ」の名前が出てくることはなかった。

それもこれも日本の世界史教育で古代地中海文明に
ついてギリシャ以外教えることがないせいだろうか。

この地は3000年位前にフェニキア人が作った古代都市国家
カルタゴの跡地であり有数の世界遺産と言われるのだが・・・・



通商国家カルタゴと軍事国家ローマはシチリア島を挟んで
睨み合って位置し、3度にわたりポエニ戦争を戦った。

とくにハンニバル将軍が30頭の象を先頭に数万人の兵と共に
アルプスを越えてローマに攻め入った作戦は特筆される。

結局三度ともカルタゴが敗れ全ては灰燼に帰し
国民全てが奴隷となって国家は滅んだ。



その遠因として前2世紀カルタゴは、50年賦と決められた
賠償金を一括払いした。

これが逆効果でいくら叩いても不死鳥のように蘇るカルタゴ人の
経済力に、ローマ人は、羨望と恐怖心を抱いたとされる。

そこでローマの指導者カトーが元老院で叫んだ。
「デレンダ・エスタ・カルタゴ」(カルタゴは滅ぼさねばならない)

国家の安全保障を傭兵に頼り平和ボケしていたカルタゴは
ローマの敵意をくみ取ることが出来ずに国家が滅んだ。

日本がカルタゴに擬せられることが多いが、
同じ運命を辿らないでもらいたいものだ。




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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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