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成長と環境(1)

友人のT氏から京都大学の環境経済学者・諸富徹氏
の新著「資本主義の新しい形」を頂いた。

この先生は過去50年に渡る世界経済について理論的そして
実証的研究を通し、なぜ世界経済は成長を減速させたか、
とりわけ日本の産業が世界競争から脱落したのかを解き明かす。

その問題の本質を「資本主義の非物質的転回」と位置付け、
その変化に日本の家電に代表される産業が「ものづくり」
に拘り、資本主義の変化に取り残されてしまったとする。



実際この50年を振り返れば日本経済の減速は顕著で
かつては二桁成長も珍しくなかったが、今や1%が精いっぱいで、
世界も3%と成長鈍化は明らかだ。

その理由はこれまでも様々に語られてきた。

①長期的に見れば産業革命そして電気エネルギ―が発展した
第2次産業革命など人類史を転換させるほどのインパクトがある
発見がなされていないこと。

②IT革命といえどもスマホの普及にみられる通り、商品が
行き渡れば収穫逓減の法則を突破できなくなるのが現状である。

③そして本著で触れられていないが、何よりも人口動態の変化も
大きい、つまり米中日欧など先進国で明らかなように人口ボーナス期は
終わり人口オーナス期に入っている。



「資本主義の非物質的転回」とは何かといえば、第二次産業の
デジタル化、具体的には労働力や消費の非物質化=知識集約化
そして脱炭素化と言ったところか。

つまり原油を燃やしてはエネルギーを消費し、環境に配慮することなく
モノを作り続けることの限界に達したと言うことだ。

GAFAに代表されるように第二次産業の第三次化つまりサービス化が
米国では図られたが、日本は脱炭素化はコスト増大と認識し、エネルギーを
燃やし続けるものづくりに拘泥したということだ。

日本企業はものづくりこそがDNAと言ってはばからず、環境を成長の
対立概念ととらえることにしばられてきた。

そのつけが回ったのが現状であり、成長と環境は対立概念ではなく
両立する二項であるとする世界基準に早く転換する必要があると
するのが本著の言うところだ。

本著は冒頭に50年も前に「成長と環境」について論陣をはった
都留重人氏を登場させ、さらにソロー、宇沢弘文、サマーズなど
理論面の妥当性も検証している。

日々中国TVドラマを見ながら唐の武則天や明の6代英宗の時代を
のんびり逍遥している筆者に、活を入れるかのごとくこの良書を
送ってくれたT氏に厚くお礼を申し上げたい。



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首都感染

小池都知事がロックダウンの可能性を示唆するや
スーパーの米や保存の効く野菜がバカ売れとか。

同時に10年前に高島哲夫が書いた小説
「首都感染」も再版されて大いに売れているようだ。

(読んではいないが)この小説では雲南省で致死率60%の
強毒性ウイルスが出現し東京都心そして世界が直撃される。

これを受けて環状8号線に沿い鉄条網が設置され
その内側の都民800万人とウイルスを封鎖する。

結局3か月の封鎖を経て50万人がそして世界では
12億人が死亡するがようやく終息にいたる。



バイオにより人類が死滅の危機に瀕する小説の先駆けに
なったのがSF作家・小松左京が書いた「復活の日」。

遠い昔学生時代に読んだものでほとんど覚えていないが、
英国の細菌研究所が開発したウイルスが東側諸国に盗まれ
世界に拡散し人類は死滅する。

その中で唯一南極に越冬する1万人(うち女性16人)
が生き残り、女性は出産を義務ずけられて人類を殖やし
その復活に向かう話だった。

ともかく荒唐無稽な話を科学で味付けしたのがSFなのだから
何でもありだが、それにしても小松左京の想像力は常識を超えた。



東京を中心に首都圏の5知事たちが立ち上がり
東京との出入りを抑制する動きに出た。

そこで思い出したのが映画「翔んで埼玉」。

昨年の話題作で自虐と差別感に溢れ、バカげた作品ながら
面白く日本アカデミー賞にもノミネートされていた。

この物語では東京周辺の県は僻地であり同時に根深い東京への
劣等感があり、東京へは関所が設けられて通行もままならない。

最終的には長年東京に抑圧され戦争状態にあった
埼玉と千葉が共闘して東京へ不平等是正に向けて立ち上がる。

兵庫と大阪のように口論せず今回は仲良く
「逆・翔んで埼玉」みたいにやってくれればそれに越したことはないが。

以上小説2冊と映画1本を紹介しておきます。
コロナ暇に苦しみ出したら騙されたつもりで是非。


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感染症

日本の新型コロナについては「持ちこたえている」との
専門家の評価があるが、日々の感染者数の増減グラフを見ていると
微分などしなくても蔓延しつつあるように見えるのだが・・・・

ということで報道番組はどれもこれもコロナ一色で、
感染症の専門家がひっぱりだこだ。

その中でもとりわけ露出度が高いのが岡田晴恵・
白鴎大学教授(57歳元厚労省、感染研)。

この人は一日2~3本の出演はざらなようで、その人気の
秘密はおばちゃん風のルックスと平易な語り口で政府が
隠す不都合を明らかにしてくれることだろうか。

お陰で人気が高まる一方でしかるべき筋から相当の圧力を
受けているようでもあり気の毒にもなる。

またバラエティにも進出しているが、この人曰く普段報道番組を
見ない潜在的なウイルスの運び屋である若者たちにこそ
教えることが多々あるとのことだ。



と言うことでこの人の著書「なぜ感染症が人類最大の
敵なのか?」を読んでみた。

この人は絵本も書くようで、本書は医学をテーマに
しているものの、文学的な表現が散りばめられている。

とくに留学していたドイツのマーブルクについて、
その街の風景とくに春の訪れについての描写は秀逸だ。

したがって欧州の歴史にも詳しいようで、感染症をローマ時代に
遡り中世、近世につながる2千年の歴史の中でとらえているところが
興味をつないでくれる。



そして肝心の感染症については、ハンセン病、ペスト、
梅毒、結核についてそれぞれ章立てして論述している。

特に発生と流行のメカニズム、そして人々の生活への
影響について分かりやすく分析している。

上記の感染症についてはほぼ収束したとばかり考えていたが
実はいまだ終息していない現実があるようだ。

例えばペストは未だ感染する人は年間3万人を超え、
そして死者も3千人にも上るとか。

さらにこれらに新たな病として鳥インフルなどが
人の移動の活発化とともにパンデミックへと拡大する。

もはや現代人は感染症から逃れることは出来ず
ウイルスの撲滅ではなくウイルスとの共存の道を探るしかないのか。



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上野界隈

日本人の典型か信仰心は皆無ながら近頃神社へ行く機会が多い。

初詣は必ず近所の松陰神社へ、そして孫たちのお宮参りや七五三と
言った行事の大半は日枝神社へ出かけてはお祓いをしてもらっている。

ということで赤坂へ詣でることは多数に及んだが、その孫もすでに
学業適齢期に達したことでもあり今回初詣を兼ねて湯島天神へ
出かけることにした。

その狭い境内は学業成就や合格祈願の御札、ハチマキ、
白だるまを買い求める人で混雑し、風情など皆無なのは残念至極。

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ほうほうの体で失礼してタクシーに乗り込み上野の山を越えて
鶯谷から根岸へと下った。

途中車窓からは不忍池、文化会館、国立博物館、寛永寺、輪王寺、
を見ることができ上野の風景を満喫することができた。

この辺りは日暮里出身で開成を卒業して作家になった吉村昭の世界だ。

その最後の作品となった「彰義隊」は上野に立てこもった彰義隊を
題材にするが、メインテーマは皇族として唯一幕府方の一員となった
輪王寺山主・輪王寺宮能久の数奇な運命。

この宮は輪王寺の住職として京から江戸へ下り、上野戦争の後は
奥州へ落ちのび、戊辰戦争後はプロシア留学そして陸軍軍人となる。

そんな150年以上前の人のことを思い出したのも
上野の山横断のお陰と言うことろだ。

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(香味屋)

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(メンチカツ)

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(海老ドリア)

ランチは上野の山を下った根岸で大正14年創業の
歴史を持つ洋食店「香味屋」にて。

ちょっとお値段は高めではあるが昔ながらの洋食の
定番を楽しんだのである。

そして食後はかつて正岡子規はじめ文人墨客が
多数住んだと言われる根岸の町の散策。

芸能の神として人気のある小野照崎神社へお参りし
さらに人気の「てこな」でお土産にせんべいを購入。

人懐っこい店番のおばあさんと会話をするとほのぼのとした
下町情緒が感ぜられ、あらためて上野界隈の良さを実感したのである。

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(小野照崎神社)

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(てこなせんべい)


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貞観政要

NHKEテレの「100分で名著」は月4回にわたり
難解な書をやさしく講師が解説する番組である。

新年1月は大唐帝国は8世紀の呉競の「貞観政要」。

太宗と臣下との問答形式によりリーダーの条件を浮彫にするもので
帝王学を学ぶに最適な書として長く日中で愛読されてきた。

大唐帝国は李淵(太祖)により建国されたが、その息子李世民(太宗)
が兄を殺し父の退陣を迫って即位したのである。

その暗い出自を乗り越えるために太宗は良き帝王を目指し、
「貞観の治」と言われる臣民をいたわる良き君子となったされる。

この書はリーダー論として日本でも徳川家康らが手本とし
現代もビジネスマンに読まれているのである。



今回のシリーズは立命館アジア太平洋大学の
出口治明学長が講師であったことから見ることにした。

出口氏は日本生命時代の先輩で80年代には共に生保マネーの
運用について円安の犯人探しや細かい指導に及ぶ大蔵省と対峙。

もちろん大蔵省の意向を受けて業界を仕切る企画の出口氏と
市場原理主義で当局の干渉を嫌う現場の筆者と意見が合うわけもなく
何度口論をしたことか。

だが1990年代はともに欧州に渡り出口氏はロンドンで辣腕をふるった。

その間筆者はパリにいたが、時に欧州各地にとどまらず
二人して地中海さらにはアフリカにまで足を伸ばすこともあった。

生保良き時代で仕事と遊びに没頭していたが、
日本経済の失速とともに生保経営も厳しくなり委縮の時代に入った。

したがって同氏の異能の突破力、並外れた記憶力と好奇心、読書量を
活用するだけの度量が日本生命の経営トップに失われたのは残念と言うか。



定年を前に退職してネット生保を創業しさらに教育者へと変身した。

この頃は教育者として、読書メンターとして、社会保障の専門家として
その名前や映像を聞かぬ日がなくなった。

やはり毎夜銀座で飲み歩いても深更に及ぶも読書を
続けた好奇心が現在の人となりを作ったのだろうか。

なんでも今年は「人類5千年史」(すでに①紀元前と②紀元後~1000年)
の2巻が発行されているが、3巻目(1000年~現代)を完成させるとのこと。

また「哲学と宗教大全」を刊行する予定だとか。

ビジネス最前線にいた人の読書量そして著作量について
この人の右に出る人は当面でてくるとは思えない。



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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