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古風堂々

文芸春秋と言えば日本を代表する月刊誌だ。

なかでも巻頭を飾るエッセイはまさに雑誌の顔と
なるだけに誰が執筆するかは極めて重要である。

したがって長きに渡る読者としては「日本の知性」である
はずのその執筆者には一目も二目も置き、誰が選ばれ
毎月何を語るか注目してきたのである。



これまで5~10年ごとに執筆者が入れ替わってきたが、
今更振り返っても遠い昔のことはほとんど忘れてしまった。

そんな中で「よしのずいから」を連載した阿川弘之と「日本再生」を
書いた立花隆の記憶は未だ鮮明だ。

80代の阿川は「よしのずいから」天井を覗いても全体像が
見えないと言いたかったのだろうが、逆に一点を凝視して
世の中を探っていたのである。

ただこの人の経歴上日本海軍の話が多かったし寝たり
起きたりの日常などその齢のせいか繰り言との印象が
強くて少しうっとうしかった。

その点東日本大震災の直後に登板し、「日本再生」を
テーマに8年間にわたっていかんなくその知見を披露した
立花隆はやはり「日本の知性」と言っても過言ではない。

特に同氏の政治、科学などそのカバレッジの広さには、
毎月刺激を受けては感心したのである。



そして今月から新たに登場したのが数学者であり、
また「国家の品格」などを書くなど道徳者の一面を
兼ね備えて文武両道の論客として知られる藤原正彦。

今回は「古風堂々」と題して毎月辛口に世相を切る
つもりのようだが、ともかく意欲満々である。

ちなみに第一回はAIについて、特に教え子でアルファ碁の
開発者の英国人について記している。

果たして今後どんなことを書いてくれるのか楽しみである。


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晴耕雨読

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(羽根木公園)

10連休の前半はほとんど毎日のように雨。

お陰で高齢執筆者による軽い本を3冊
読むことができた。

一つは83歳野村克也の「ありがとうを言えなくて」。

これまで野村監督の毒舌とID野球理論に喝采を
送ってきたが、今回の愛妻サッチーへの追悼本は
同氏の心身の衰えを気にさせる。

第三者から見れば悪い女ではあるが自分にとっては
良い妻だったと著書は思い出を語っているが、妻に
先立たれた男はいかにも弱い。



そして次に読んだのが坂東眞理子の「70歳のたしなみ」。

70代を黄金世代と言い、「終活は急ぎ過ぎない」
「上機嫌に振る舞う」「人は人自分は自分」など生き方の指南書。

残念ながら余り面白いとは言えず、その売り上げも2005年の
大ベストセラー「女性の品格」には遠く及ばないだろう。



ということで前2作はともに老人色が充満して少し気が
滅入ったが、それを一気に吹き飛ばしてくれたのが
内館牧子の「すぐ死ぬんだから」。

78歳のオシャレな老女が主人公で
多少「意地悪ばあさん」を連想するが、
青島幸男とは一味も二味も違う痛快さ。一読をお勧めしておきます。

脚本家・内館牧子と言えば、横綱審議委員として朝青龍との
バトルで名を馳せたが、先般の「終わった人」はエリート・
サラリーマンの定年後を描いて大ヒットとなった。

今回の作品は前作に負けず劣らず。

「ナチュラル」を言い訳にオシャレに気を使わない
多くの横着な老人へのアンチテーゼだ。

70代と言う黄金世代の生き方の参考書としては、
坂東眞理子よりも何倍も明るくて含蓄に富んでいる。


百歳人生

歴史学者ユバル・ノア・ハラリは人類の歴史と未来について考察し、
「サピエンス全史」そして「ホモ・デウス」と世界的ベストセラーを連発した。

前者においては人類の中でも最も弱い存在のホモ・サピエンス
が百獣の王となった理由を知恵と集団行動のたまものと断じた。

そして後者においては、人類は眼前に立ちはだかってきた飢饉、
戦争、疫病を克服した結果神に近づくまでに進化したとした。

もはや人類は「ホモ・デウス」と言っても過言ではない存在となり、
神の役割のみならず永遠の若さを手に入れようとしているとした。

実際過去100年で人類の寿命が倍になったが、さらに将来的に寿命が倍、
つまり150歳になった場合の世界を想像したりもしている。

ただ科学的に人類が150歳まで生きる可能性はほぼないので
余り心配する必要はなさそうではあるが。

平均寿命の延びは医療の進歩により、若くして
死ぬ人が少なくなった結果であることは明らかだ。

したがって人類の個体はせいぜい生きても100歳程度であることは
今後も変わらないだろう。

実際150歳まで生きることができるなら、70歳ぐらいで再度
新たなスキルを身に着ける必要が出てくるだけに厄介だ。

また結婚も2度、3度するのが普通となるだろうし、
これまでの価値観ではいろんな困難に遭遇することになるだろう。



目下のところ人生150歳は夢のまた夢であるが、100歳は現実的だ。

半世紀前まで「人生50年」が定着していたが、
今や自らの思考を「百歳人生」へと大転換する必要に直面している。

このような折80代半ばを超えた五木寛之の
「百歳人生を生きるヒント」を
読んだ。

それにによれば各年代について次のような生き方アドヴァイスを
しているので、列挙しておきたい。

60代は群れから離れじっくりと孤独を楽しむこと。

70代は大人の黄金期であり、新しいことに挑戦し、
学びの楽しさに目覚めること。

80代は死の影を恐れず自分ファーストで今日を生き、
明日のことは思い悩まない。

90代は妄想して回想世界に遊べ、と。

分かったような分からないような気がするが、
ともかく人生の先達の言葉を覚えておけば将来役に立つかも知れない。



平成三十年

過日通産官僚で小渕内閣を支え、さらに小説家として「油断」「団塊の世代」
「平成三十年」など日本の近未来を
予測してきた堺屋太一氏が83歳で逝去した。

また大阪・堺の出身で橋下徹の大阪都構想を
理論的に支えた人でもあった。

この人は小説「平成三十年」において少子高齢化の進捗を
予測していたが、その人口減少の実態は小説の予想を
大幅に超えるものとして慨嘆していたという。

昭和の末期において日本は米国を抜いたかと錯覚に陥るほど
存在感を発揮したが、平成の30年間において想像を絶する凋落をしたのである。




そんな折野口悠紀雄氏の「平成はなぜ失敗したのか」を読んだ。

同氏は平成を1989年1月7日から2019年4月30日までの期間を
1990年代、2000年代、2010年代に3分割して考察している。

第1期はバブル崩壊期、第2期は円安期、第3期は
東日本震災とアベノミクスの時代と定義している。

第1期はバブル崩壊についてその対応が求められたが
実際は消費体質にどっぷりつかったせいで緊急を要した対応が
7年近く遅れてしまったことが禍根を残したとしている。

第2期については中国はじめ新興国の台頭の中で国内生産を海外シフト
すべき時であったはずなのに、時ならぬ円安に国内シフトへ逆流が進んだ。
おかげで日本が製造業・輸出立国に拘泥し投資立国への構造転換に失敗した。

第3期については東日本大震災により日本のインフラの脆弱性が
露呈されたにも拘わらずその対応が遅れたこと。

さらにデフレに対する対策として打ち出したアベノミクスもマネタリーベース
は増えたが肝心のマネーストックは増えず、結局経済活性化できなかった。

その結果先進国で進むIT化そして新興国での生産力向上と言った
世界的潮流に乗ることが出来ず埋没してしまった。



このように日本の平成30年間は失敗の連続であり、
「失われた30年」として位置付けられることになってしまった。

さすればあらたな御代に日本経済再生の芽があるのかと言えば、
急速な人口減少が進む中でその解決策
である移民問題もほぼ手つかず。

結局新たな御代は堺屋太一氏の遺言通り厳しいものになるに違いなく、
また現代を代表する経済学者の野口氏も有効な処方箋を提示できないのだ。

古今東西の歴史が示すようにピークを打った国が
再興するのは奇跡と言うほどに至難であり、
残念ながら日本もその例外ではないと言うことだ。


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世界のリスク

銀行時代からお付き合いしている倉都康行氏
から新著「危機の資本システム」(岩波書店)をお送りいただいた。

同氏は証券・資本市場の専門家としてロンドンそして
米銀で勤務したあと、この20年コンサルタントのかたわら
教鞭をとりつつ執筆を行うなど多岐に活躍されている。

今回の著書において、リーマンショックから10年が経過し
予想外の世界経済回復に安心感が広がっているが、
その風潮に対しリスクを検証し警告を発している。

具体的には米国金融システムの脆弱性、中国経済の混迷化、
通貨ユーロの弱体化、日本における財政不安と金融リスクなど
を指摘しているのである。



リスクは発生確率と影響度の大きさによりマトリックス化
することができる。

それでは発生確率が高くそして影響度が大きなものは何か。

倉都氏はそれは現下の米中貿易戦争のの拡大にともない
中国経済が不安定化することであるとしている。

11月後半のG20における米中首脳会談を前にして、目下米中関係の
改善が期待されているが、ことはそれほど容易ではなさそうだ。

米国は米中貿易戦争を経済問題としてではなく、
G2の覇権争いつまり安保問題ととらえている事による。

一方中国に目を転じれば、インフラ投資もゴーストタウンが広がるように
過剰投資と過剰消費で成長を実現するのはもはや限界だ。

また株価の底割れの可能性も捨てがたく、チャイナリスクは今や
発火寸前と言うところだろうか。





それでは発生確率が低くてもその影響度が大きいもの、
それはテールリスクと言われるものだが、倉都氏は
日本の財政・金融リスクの存在と指摘している。

すでに6年を経過したアベノミクスの集大成として
これからの3年が位置付けられる。

その間の最大の課題こそが出口戦略つまり異次元緩和からの
脱却と言うことだ。

いつまでも劇薬を使い続けることが出来るはずもなく
その副作用は日本経済の根幹を傷める。

すでにインフレ目標の2%など画餅であることは誰もが
認めるところであり、グローバルリスクが伝播した時の
円高を通じて日本経済が大打撃を受けることは避けられない。

つまり6年にわたる円安そして名目実効レートベースで見た
ドル高を見れば、次に来るのは未曾有の円高・ドル安だ。

その時に打つべき手がないことが日本そして世界経済の
テールリスクになるに違いないだろう。


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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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