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天子蒙塵3

浅田次郎が西太后とその宦官・李春雲の主従を主人公に
「蒼穹の昴」を書き出してすでに22年。

「珍妃の井戸」「中原の虹」「マンチュリアンレポート」そして
「天子蒙塵」とこれまで5部11巻にわたり清朝の歴史を綴ってきた。

今回読んだのが第11巻{天子蒙塵」で残すは今秋発売予定の
第12巻のみとなり物語も1930年代といよいよクライマックス。

現在主人公の溥儀は再度皇帝となることを夢見て天津から
新京へ移って日本国の傀儡となっている。

そしてもう一人の主人公で張作霖の息子張学良は満州の
支配権と軍隊を蒋介石に譲り英国ブライトンで落魄の日々。

この二人の天子がいよいよ塵埃にまみれて行く姿が描かれる。



日本、朝鮮、モンゴルに建国神話があるように中国のどの王朝も
その正統性を担保すべくその一族の神話が存在する。

中国東北部で力を蓄えた女真族の愛新覚羅家も同様で
17世紀前半長城を超えて漢民族を支配するためには
それなりの神話が必要だっただろう。

その神話を浅田次郎はさすがと思わせる筆致で描いている。

その内容はかいつまんで言うと、3人の天女が地上に降りてきて
沐浴していると、一羽の鵲(かささぎ)が飛んできて嘴に加えた
赤い実を羽衣のひとつに落した。

そして天女の一人がその実を呑み込むとみるみる体が
重くなり天に飛ぶ立つことは叶わず、ついにひとりの男の子
を産み落とした。

それが開祖ヌルハチで生まれてすぐに勇者のいでたちとなり
突然満州の言葉をしゃべりだしたと言う。

そのヌルハチが後金国を建て、その孫の順治帝が紫禁城に入り
中国全土に覇を唱えることになる。



愚帝が続いて亡国の憂き目を見た明と異なり、
賢帝を輩出することになるのが清朝の特色だ。

愛新覚羅家は代々多くの子供に恵まれたことがこの王朝隆盛の
背景であり、その後も康熙帝や乾隆帝などが続くことになる。

とはいえその血脈も貴種化が進むにつれてその力強さが
衰えて行くのは世界中の王家に見られる傾向で、清朝も19世紀になると
後継者不足に至ってしまう。

溥儀も張学良もこの歴史的傾向に逆らえず先祖に比べ洗練されているものの
ひ弱でアヘンに手を伸ばすことになるのはやむを得ないところか。

ともかく浅田次郎のお陰で長きにわたり清朝の物語を楽しんだが、
作者も60代後半となりライフワークを完結するにふさわしい
年頃になったと言うことだろう。


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花の図鑑

史上最速と言われた梅雨明け宣言は一体何だったのかと
思わせるように日本全域において大雨が降り続いている。

お陰で梅雨の中休みの暑さから逃れることができたので
文句は無いのだが・・・

雨の中街中を歩いていると道端には様々な花が咲いている。
名前は知らないが、可愛いので思わず写真を撮った。

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立てばシャクヤク 座ればボタン 歩く姿はユリの花

と言われるように女性はしばしば花に例えられる。

これを小説にしたのが阿刀田高の「花の図鑑」で、
プレイボーイが次から次へと女性を花にたとえつつ
アプローチする話。

1990年頃の日経新聞に連載されたもので通勤列車で
読むには軽くてそれなりに人気が出た。



そして6月の「私の履歴書」はこの作家でその代表作として
自ら挙げていたのがこの作品である。

阿刀田高の作品はほとんど読んでいないので評価する資格はないが
その人の履歴書は小説風に仕立てているものの平岩弓枝の時も
同様に、その人生は作品と比べてドラマ性が乏しく途中で読むのをやめてしまった。

多くの場合、小説は事実よりも奇なりなのだ。



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アレクサンドロス

世界の英雄と言えばハンニバル、カエサル、チンギスハーン、
ナポレオンなどが挙げられるが、彼ら(チンギスハーンを除く)が英雄と
崇めたのがアレクサンドロス大王、(英語ではアレキサンダー大王)だ。

紀元前4世紀の人でギリシャ辺境のマケドニア王の子
として生まれ20歳で父の後を継ぐ。

当時ギリシャはペロポネソス戦争の後でアテネはスパルタの
属国化して往時の勢いはなくなっていた。

そのような状況において32歳で死去するまでギリシャを統合し、
エジプト、ペルシアを征服しさらにインドまで遠征した。

自らが戦略家であるとともに武芸に秀でていた点も英雄たちが
あこがれた英雄であったということだろうか。



塩野七生氏の「ギリシア人の物語」の第3巻「新しき力」を読んだ。

多分塩野氏が50年に渡った作家生活の中で挑む
大作の最後になるとも言われており、それなりに心して読んだ。

この人の英雄好きは相当なもので、とりわけカエサルについては
1巻に止まらず2巻におよぶほどだったのだ。

アレクサンドロスの遠征により西洋文化がオリエント文化に
触れることになりヘレニズム文化が生まれたが、自身も
ペルシャの王を名乗るとともに専制君主の色合いを強めた。

ともかくその偉大さは特筆される人だったと言うことだろう。



ところで日本の英雄と称される西郷隆盛。

目下「西郷どん」は徳之島からさらに沖永良部島に流されて
生死の境を彷徨うなど依然英雄とはほど遠い状況。

その中で「ナポレオン」という西洋の英雄の存在とフランス革命
に接するという筋立てなのだが。

7月以降のドラマは、薩摩への帰還命令が出てさらに京に上り
英雄の道を歩くと言うことだ。

果たしてどうなるのか。

そして西郷どんが古今東西の英雄と肩を並べうる人なのかどうか
最終回まで見終わった時点で決めたいと思う次第だ。



金融危機の検証

過日東大名誉教授・荒巻健二氏より新著「金融グローバル化の
リスクー市場不安定性にどう対処すべきか」(日本経済新聞出版社)
をお送りいただいた。

同氏は大学時代の同級生で大蔵省、IMFで勤務しその後
長崎大、東大、東京女子大で教鞭をとる傍ら国際金融特に
金融リスクについて行政的・学術的視点から研究を続けてこられた。

そして今回これまでの研究を深め、さらに各国の財務省、中央銀行
そして研究者からのヒアリングを踏まえてこの一冊を上梓されたのだ。



同書はアジア通貨危機、リーマンショック、欧州債務危機と過去
20年において発生した金融危機の検証を行い、さらに
その回避に向けていかなる対応が可能であるのかを考察している。

タイで始まりインドネシアから韓国に飛び火したアジア通貨危機は
ジョージソロスのタイバーツ売りなど固定相場制の故に投資マネーの
餌食になって生じたと記憶される。

実際新興国つまり金融市場が未発達で外貨準備が不十分な
開放的後進国経済において発生したというのが一般的な解釈である。

逆に中国やベトナムなど強力な資本規制が行われていた閉鎖的経済下に
おいてはこのような危機が発生しなかったことが今後を考える上でヒントであるとのこと。

またリーマンショックにおいて先進国においても後進国の固有と
思われた金融危機が発生することが検証された。

また国境をまたいでリスクが伝播するものであることは
欧州債務危機において証明されたのである。

つまり国際的資本フローに対する脆弱性を克服するには
資本規制と民間銀行の協力がこれら金融危機への処方箋に
なると結論づけられている。



これまで筆者も長く国際金融に携わり、金融危機を目にしてきたが
それはあくまでそれを飯のタネにするディーラーとして、また時に
機関投資家として資産保全の観点から市場の安定を望んできたものである。

しかし荒巻氏は国際金融のグローバル化に伴うリスクを金融を
行政するものとして掘り下げており、そのスタンスの違いを考えさせられた。

同氏は今後も研究に没頭することになるのだろうが視点は違うものの
筆者も負けずに金融危機の本質について考えてゆきたいと
新たに刺激を受けたのである。


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将棋ミステリー

藤井6段の登場、ヒフミンの引退、羽生永世7冠の100タイトルなど
話題沸騰の将棋界を舞台にした柚月裕子著「盤上の向日葵」を読んだ。

このミステリー小説は昨年秋に出版されたが、それ以前つまり藤井くん登場前
に雑誌に連載されていたもので、特にその人気にあやかったものではない。

ただ作品はタイムリーで藤井人気との相乗効果でベストセラーに
なっているようで、長編ながら飽きることなくあっと言う間に読了。



さすがに棋譜まで熟読する余裕はなかったが、将棋界の
様々なこと、例えばアマチュアの世界、奨励会を含めてプロの世界、
そして「真剣師」と言われる裏の世界まですべてを網羅。

さらに駒の並べ方や作り方なども含め将棋の周辺情報に
詳しくなれる時代にマッチした作品でもある。

そして刑事の一人もまた奨励会を26歳の年齢制限で退会した若者、
さらに舞台は天童、諏訪、島根などへと移ってゆく。

そのうち映画化されるのだろうが、清張の「砂の器」のような
作品になるのだろうか。



ともかく目下の将棋界は藤井くんの昇段が注目の的。

今後勝ち続ければ5月上旬にも7段になるとも言われており
ますます応援に熱が入る。

どこまで勝ち続けるのか分からない若者の可能性こそが
人気の秘密ということだ。

少し将棋に詳しくなりたい方、そしてサスペンスを楽しみたいと
思っている方にはこの将棋ミステリーをお勧めしておきます。



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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