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人口と歴史

オックスフォード大学の人口学者P.モーランド教授が書いた
「人口で語る世界史」を読んだ。

この研究対象は19世紀以降の世界で、大英帝国が
飛躍的に人口を増加させ国力を増強したかについて詳述している。

それまでの世界は人口増が土地の生産力を上回ると悲惨が起きる
との「マルサスの罠」に縛られていたが、産業革命を機に新しい時代が切り開かれたのだ。

そしてそれ以降ドイツ、ロシアが人口を増加させて英国に追随して行ったことを分析し、
どのように人口が国家の興隆に影響を与えるかを説く。

著者は乳児死亡率、出生率、移民の数が人口増減を決めるとし、人口が
国家の原動力で、人口とはまさに軍事力であり、経済力だと断じた。

つまり帝国の運命は人口の増加と不可分としたのである。



人口と経済力についてはすでに現代経済学のテーマとして
様々に研究されてきたのでそれほど目新しいことはない。

とはいえ人口増が必ずしも成長の原動力ばかりであったわけではなく
時に足かせになることがあったのも否定できない。

人口と歴史の関連についてはフイレンッェ大学の数学者にして人口学者の
M・リビィーバッチ教授の「人口の世界史」などでも数理的に分析されている。

同著では数百万年の人類史において数千億人の人類が誕生したとし、
さらに人口の増減に沿いながら世界史が様々に刻まれてきたことを説明していた。



以上の人口と歴史の関係性に思いをいたせば、大英帝国の減衰や米国の興隆も説明でき、
また近未来的には中印がそしてさらにはサブサハラが世界の中心になるのも十分可能だ。

一方人口減少のトレンドに入った我が国については西欧のどの人口学者も
注目するところである。

そして異口同音に我々の未来は産業革命に匹敵するような
技術革新により労働生産性を向上させない限り悲観的という。

つまりそれを回避する処方箋はもはやないようで、国家の衰退を運命として
受け入れざるを得ないのは一国民国家のひとりとして残念としか言いようがない。


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オリジン

今月は面白い小説にいくつも遭遇したお陰で
本ブログで読書ノートを書く機会も5度目となった。

と言うことでさながら読書月間となった7月の掉尾を飾るのは
ダン・ブラウンのロバート・ラングドンシリーズ第5弾「オリジン」である。

著者は2000年の「天使と悪魔」でハーバード大学の
紋章学教授ラングドンを主役にして本シリーズをスタート。

特に第2作の「ダ・ヴィンチ・コード」は、パリのルーブル美術館を皮切りに、
英国に渡ってキリストの子孫たちに遭遇するという壮大な構想により大ブレーク。

そして第4作の「インフェルノ」でダンテ神曲の謎解きをしつつ
人口爆発へと問題を展開させ、同時にフィレンツエからイスタンブールへ
と読者を誘った。



そして舞台をイベリア半島に移したのがこの第5作で、
「オリジン」とはまさに「起源」。

ダーウインの「種の起源」を連想するように今回のテーマは
「人はどこから来たのか、そしてどこへ行くのか」。

因みに人類を遡れば、単細胞生物、そして微生物に至るとも言われるが、
生物の始まりは依然不明で、宇宙からやってきたのか神が作ったのか。

ここから先はネタバレしてしまうが、人類は新たな生物と
「共生」を余儀なくされることに
なると著者は予測する。

宗教と科学が対峙する中で著者が導く新たな生物とはテクノロジー。
つまりAIが発達し、スマホと人間の関係が進化した未来が
到来することになると言うのだが。



ダン・ブラウンの作品はダヴィンチコードが44言語で
7千万部売れたように、これまでの全7作品で2億5千万部を
超えたという。

さらに今後何冊分もの構想があるとのことだから驚くと同時に
新刊を楽しみにしておきたい。

因みに今回の舞台はスペインバスク州のビルバオとカタル―ニャ州
バルセロナで、当然のようにサグラダファミリアがメイン舞台となる。

映画化されたら早速見に行ってみたいと思う。



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大暴落

今年もまた日本列島は豪雨さらに記録的日照不足に
襲われて26年ぶりの冷害が懸念される。

一方欧州では40度を超える歴史的暑さとなっているようで
もはや世界そして日本は気候変動リスクから逃れられない。

そんな折幸田真音の「大暴落(がら)」を読み、改めて
自然災害が高度にテクノロジー化した都市社会を
襲う恐ろしさを実感したところだ。

実際災害マップによれば江戸川、荒川の氾濫によりその流域はもちろん
銀座、赤坂あたりまで浸水して都市機能がマヒするとはよく言われているが。



本著において語られる日本の金融市場の大暴落をもたらす
パニックの原因は3つ。

1.女性総理の誕生
2.秩父での豪雨による荒川の氾濫
3.日銀の債務超過

このトリプルショックが同じ日に発生し、金融市場は大暴落。

103円だった円相場は海外市場で130円にそして翌日の
東京市場では160円へと続落。

また長期債は6%に上昇し、株価もまた大暴落するという筋立てだ。

実際このようなトリプルショックが同時発生すれば日本は
大変なことになるが、本当に円安になるのかは分からない。

逆に円高になるとの見方も可能なだけに、マーケットは
ほとほと難しいものだ。



ともかく蒸し暑さとスローな相場にぼけ気味になっている頭を
覚醒させることが出来たのはこの本のお陰。

この著者は「札割れ」において国債が未消化に終わり円債が
暴落する話など金融小説を書いてきた。

とはいえこの間著者の書いたものや発言を拒絶してきた理由はひとつ。

と言うのもこの人は10年ぐらい前は藤原久美などとともに
「原発3人娘」と言われ、原発各社の広告塔となって派手に
パフォーマンスしてきたことによる。

福島原発以降はさすがにおとなしくしてその
痕跡を消すことに努めているようではあるが。

ともかく大震災から8年を過ぎたことだし、この人の著作も
たまに読んでみてもよいかなと思う次第だ。


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パンデミック

楡周平の新刊書「サリエルの命題」を読んだ。

テーマは①パンデミック(流行病)の恐怖と②日本の
医療保険制度の崩壊懸念、つまり共に怖い話である。

これまで高齢者問題、農業問題など様々な分野に切り込んできた
著者が今回新たに高齢少子化による医療保険制度の崩壊の
可能性を指摘している。

小説的にも面白く作られており、アカデミズムや
政治の世界の不条理をあぶりだすなど退屈することはない。



この小説は新型ウイルス「サリエル」の秘密が漏洩し
さらに変異して国民を危機に直面させる筋立てだ。

パンデミックへの対応として治療薬と予防薬(=ワクチン)が
必要とされるが、それらが十分に備蓄されていない上に、
すぐには生産が追い付かない点が問題になる。

そこで接種の優先順位が重要となるが、余り知られていないが厚労省の
「プレパンデミックワクチン」のガイドラインによれば医者、国会議員、官僚、
NHK職員などが優先されることになっているそうだ。

それに対して著者は優先対象者として子供+母親、若年層、生産年齢人口を
順次上げ、65歳以上の高齢者は対象外にすることを説いている。



そして2つ目のテーマが「医療保険制度」。

我々は生涯をかけて年30万円つまり1500万円ぐらい
保険料を払うようだが、それらの保険料の上で
公平で安く診療を受けられる皆保険制度が成り立っている。

とはいえ長寿が進み医療費の6割以上は高齢者が独占。

その結果すでに国民の医療費は42兆円に達し健保と患者負担で
6割が賄われているものの残りは税金に頼り、世界でも特筆
されるこの制度が瓦解しそうなのである。

さらにオプジーボに限らず1千万円以上の高額医療薬が
保険対象になるたびに制度は疲弊し、外国からの移民も
加わってその疲弊の速度は速くなる。

ということで本作品を通じてパンデミックや医療制度の
実情と問題点を知ることができる。

ランチ2回を抜いて書籍費1850円を捻出しても良いかなと
思う方がおられればご一読をお勧めいたします。



ダ・ヴィンチ

ウオルター・アイザックソンの「レオナルド・ダ・ヴィンチ上下」
(文芸春秋社)を読んだ。

この著者はこれまでベンジャミン・フランクリン、アインシュタイン
そしてスティーヴ・ジョブズなどの天才の伝記を書いてきた。

そして今回は500年前のルネサンス最盛期である
1452年~1519年を生きた天才ダ・ヴィンチに迫った。

ダ・ヴィンチは生涯2万ページほどの自筆メモを書いたとされ
著者はそのうち現存する7200ページのメモを克明に読み込み
その実像を描き出した。



イタリアと言えばとりわけトスカーナの風景を気に入っているが、
ダ・ヴィンチはまさにそこの人。

フィレンツェの郊外20キロにある
ヴィンチ村の公証人の家系に生まれたが、
その母は農家の娘であり生涯非嫡出子として扱われる。

父方の祖父母に育てられ12歳でフィレンツェの工房で修行。

その能力は師匠を驚愕させるとともに、その興味は彫刻、
絵画の領域に止まらず解剖学、科学、軍事学へと発展した。

同時にかなりの美少年であったそうで、師匠ベロッキオの
いくつかの作品のモデルもしていたとの説がある。

とはいえ女性との浮いた話は皆無つまり同性愛者だった。

フィレンツェを振り出しにミラノ、ローマへとパトロンを探す
人生を辿るが、その中にはロレンツォ・メジチやチェザーレ・
ボルジアなど当代の有名人の庇護をうけることになる。

またボルジアの下でマキャベリとともに働き、さらにヴァチカンでは
人生で唯一のライヴァルであったミケランジェロと競ったりした。



67歳で死去する最晩年の3年はロアールのアンボワーズにおいて
フランソワ1世の寵愛を受けて暮らす。

その頃もまた多くの息子たち(=恋人)に囲まれて楽しく暮らしていたと
されるが、それはまさに150人の息子たちに見送られたジャニー喜多川と
同様だったと言うことか。

因みにこの作品は同じファーストネームを持つ
レオナルド・ディカプリオ主演で映画化される。

その名前の由来は、この人の母が妊娠中にウフィッツィ―美術館で
ダ・ヴィンチの作品を見ていた時に息子がおなかを蹴ったとことによるとか。

出来すぎた話なのでその真偽は不明としておこう。






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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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