わが友

朝吹登水子さんの書いた
「わが友 サルトルとボーヴォワール」を読んだ。

それは50年前にサルトルとボーヴォワールの来日に伴い
パリからお供した時の記録。

そしてその後二人が亡くなるまでの15年余りの
交遊がしたためられている。

ふたりは慶応大学の招待で来日し、京都、倉敷、九州などへと
講演旅行を続けた。

ホテルオークラや京都の俵屋など各地の宿舎で
毎夜ウイスキーで晩酌していたようだ。

ふたりの関係は対等で、日本の文化、会った人、身の回りの出来事など
いろんなことに興味を持ち議論しては思考を深めていた様子が綴られている。

ちなみにサルトルは清水寺から下る三年坂を
「最も美しい散歩道」と言って気に入っていたようだ。



帰国後も交友は続き、最晩年に体が不自由になったサルトルを
何度も見舞ったことや二人を我が家に招待したことなどの思い出が
散りばめられていた。

実際有名人のサルトルとカフェで話していると、いつの間にか
周辺の人は聞き耳をたて、場合によってはサルトルの真後ろの席へと
移動してくることなど日常茶飯事だったようだ。

今二人はモンパルナスの墓地に仲良く眠っているものの、
訪れる人は引きも切らずで落ち着けないかも知れない。



肝心の朝吹さんはサルトルから自らの履歴について
小説にするよう再三勧められていたとのこと。

それが「愛の向こう側」として出版されたのが1970年代後半頃で
サルトルが帯に推薦文を書いてくれた。

朝吹さんは一度お見掛けしたこともあるし、軽井沢の睡鳩荘を
訪れたことがあるのも何かの縁。

しばらく朝吹登水子・由紀子母娘がライフワークとして取り組んだ
F・サガンの作品集を読んでみるのも悪くなさそうだ。


ps

さらに白石浩司「サルトルの時代」によれば、「結婚は物質的なものではなく
愛情による」として二人は契約結婚した。

また二人とも余り子供が好きでなく、
一方恋人は何人かいたようだ。

その結婚観は独特で一般常識人の理解を超える。


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何がめでたい

あの若大将加山雄三も80歳を迎えた。

歌に絵にそしてヨットにとその才能を全開させているが
4月には有楽町・国際フォーラムで5000人を集めてコンサートをするようだ。

ちょうどテレビで83歳の黒柳徹子と対談していたが
両者ともに口達者で元気一杯。

男80ともなればよぼよぼのイメージしかなかったが
こんなに若々しくはつらつとしているのもありのようだ。

ちょっと気分が明るくなり、秘かに頑張ろうかとも思う。



そんなおり「90歳、何がめでたい」が50万部を突破して
話題の佐藤愛子と黒柳徹子の対談をまたまた見た。

93歳ながら美しく着物を着こなし、歩く姿も若々しく
口紅を引いておしゃべりも魅力的。

まさに一時代前の70歳というイメージで驚くばかりだが、
高齢化が進むこれからはこんな人が続出してくるのだろうか。



年金資金の枯渇が避けられない中で、政府の意図を反映してか
老人学の専門家たちにより65~75歳は准高齢者に格下げされ、
これからは簡単には高齢者になれない時代となった。

一方平均寿命は延びているものの健康寿命が男71歳、女74歳と
停滞しているのが実情で、男女とも晩年の10年ほどは不自由な生活を
余儀なくされる。

加山雄三や佐藤愛子に負けず死ぬ日まで健康に暮らしたいものだが
人生計画通りに進まないのが悩ましい。

ついてはこの先人たちから何を学ぶべきか。

曰く、健康法は寝ることで、くよくよしないこととか。

さらに言えば人に見られているとの緊張感つまり現役であることが元気の
秘訣なのかも知れない。


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フランスゼミ

仏文学とは何十年も無縁に暮らしてきたが、
「代田フランスゼミ」と言う読書会の存在を知り
早速体験入門した。

月1回の集まりで、毎月1冊を選び議論する。
もちろん原書で読んでも良いが、訳書でOKとのこと。

参加者は15人位でかつてボーボワールやサガンなど
に傾倒する女子学生だったに違いない女性陣が半分以上。

30年前にルソーの研究家の小林善彦東大名誉教授を中心に
始まったそうで、今はその弟子の田村さんがゼミ幹。



今回はラディゲ「ドルジェ伯の舞踏会」で、若い主人公と
人妻そしてその夫との三角関係がテーマ。

ちなみに20歳で夭逝したラディゲの「肉体の悪魔」を読み、
その早熟ぶりに筆者は驚いた記憶がある。

したがってゼミでの話は恋愛論におよんだのは当然で、
また大学のゼミと違うところか。

ということで文芸評論はだめでも恋愛論ならば何とかなるか。



ちなみに自らの学生時代の仏文学の遍歴を思い返してみたが、
印象に残る作家と言えば一に「モンテクリスト伯」の大デュマで、
大きく離れてロマン・ロランやスタンダールが続くと言ったところか。

今年の読書計画に依れば、ゾラやベルクソン、ミシュレ
それに「失われた時を求めて」のプルーストら。

どこまで理解と共感ができるか分からないが、1年限定で
これらの作家と付き合ってみようかと思っているところだ。

PS。

ところで3月のテーマであるジュリアン・グラック「シルトの岸辺」を
読んでみたところ、詩的と言うかシュールと言うか暗喩、比喩が
多くてよく理解できない。
やっぱり純文学は手に余る。

フランスでも有数の文学賞であるゴンクール賞を辞退したことで
有名な作家で、またサルトルに並ぶとも言われているらしいが、
その良さが分からない。

混迷の一年を送りそうだ。






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パリの日本人

日本と欧州の接触について少し調べようと、
「幕末遣欧使節」(宮永孝)や「パリの日本人」(鹿島茂)など
いくつかの書籍を当たってみた。

江戸幕府による遣欧使節は文久年間(1862年)に始まる。

総勢36名で英国の軍艦で行き、一年あまりをかけて、
英仏独露蘭を訪問し病院、製鉄所などを視察している

さらに慶応年間の徳川昭武一行の万博参加なども含め8回にわたり行われた。

その姿はマルセイユ経由で入ったパリで目撃されては新聞で報道され、
ホテル・ルーブル、ルグラン、スクリーブなどで人だかりができたという。

よほどちょんまげに大小二本指は珍しかったようで、その群衆にいた
ゾラだったかモーパッサンだったかは「サルだ」と言ったとも伝わる。



日本から欧州へ渡った者と言えば、16世紀中葉ザビエルの帰国に伴った者が
いたとされるが、正式な記録では天正少年遣欧使節、さらに支倉常長の
慶長遣欧使節が最初だ。

その後は鎖国政策のため、西洋を見聞するのは薩摩藩など
の組織的密航か漂流者に限定された。

その中で特筆されるのは、寛政年間に大黒屋光太夫がロシアに、
そして探検家・間宮林蔵が樺太から清の黒竜江を遡上したこと。

さらに土佐の漁師・ジョン万次郎や播磨の漁師・アメリカ彦次郎などが
捕鯨船に助けられて米国で教育を受けている。

前者は後に幕府に取り立てられて旗本から東大教授になり、
後者は米国籍に転じハリスの下で横浜の米領事館の通訳となり
さらに新聞社を興した。

このような人々が日本人として西洋文化に触れる先駆者となった。



明治に入り欧州への留学は一般化し、特に皇族・華族の
遊学は当たり前となる。

パリで10年にわたり真面目に勉強した西園寺公望などの
一部例外を除き、多くはバカロレアをあきらめパリで楽しく過ごしていたようだ。

その極め付けが、1920年代に明治天皇の娘3人を
妻とする条件で宮家を継いだ北白川、朝香宮、東久邇の3宮家の当主たち。

この人たちはパリで優雅に暮らしていたようで、ノルマンディーに
ドライブに出かけ国道から外れて木に激突して北白川宮は死亡、
夫人さらに朝香宮も足を引くようになったと言う。

この事件は日本にも伝わりその素行については
かなり問題視されたようだ。

今では三笠宮(ヒゲ殿下)や浩宮などに見られる通り
王室がないせいか、渡航先はフランスではなく英国が定番となっている。

ともかく片道40日もかかった幕末の頃に比べると
欧州への旅も随分楽になったものだ。



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謹賀新年

今年もよろしくお願いします。

元旦はいつもの通りお節料理と
岩国の酒「獺祭」で新春を寿いだ。

今日は、明日から娘たち家族が訪れるのに
備えて静かに過ごす一日となった。



年末は少し風邪気味で掃除をさぼりこたつで読書。

一年の最後に読んだのは、奈良大学の教授で万葉学の
研究家である上野誠の「天平グレートジャーニー」。

作家のような文章は書けないとご本人が言うような場面もあるにはあったが、
構想は大きく、この人にしか書けない学芸エンターテイメント。

主人公である下級貴族・平群広成(へぐりひろなり)は遣唐使に選ばれ
平城京から長安へ行くが、帰途嵐に遭い安南(ベトナム)へ漂着。

それ以降長安に戻り、さらに渤海を経て出羽の国にたどり着く
7年間にわたる苦労の旅の物語だ。



主人公を取り巻く人物として、山上億良はじめ在唐の阿部仲麻呂や
吉備真備などが登場するが、それぞれが活写されていて面白い。

そして天平時代と言えば玄宗皇帝がおり、朝鮮半島に新羅
さらに中国東北部で渤海が立ち、日本は東端の小さな存在。

当時の外交関係がよく分かるのは大学の先生が
執筆するものであるだけに当然か。

冒険譚が好きな方にはおすすめの一冊。
ランチを一度抜くと,(つまり900円で)2日間楽しめます。


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プロフィール

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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