仏大統領選2

昨年6月の英国民投票、11月の米大統領選と立て続けに世論調査が
はずれたが、今回の仏大統領選は思いのほか世論調査通りとなった。

さらにこの一年ポピュリズムと反グローバリズムの嵐が世界を飲み込み
かけたが、その懸念も5月7日の結果を待つまでもなくひとまずやんだ。

お陰で市場ではVI(恐怖指数)は一気に下落し、予想以上に
広がっていたリスクオフの動きが巻き戻されて仏の株式市場も
4%上昇するなど安心感が広がった。

ともかく仏がユーロから離脱してフランに戻り、その価値の下落が
回避されたことにはひとまず胸をなでおろした。

したがって退蔵している星の王子様を描いた50フラン札を使う
機会を逸したのだが、ユーロが強くなるのは歓迎だ。



予想通りとは言え4人が混戦だったことは、改めて
仏そして欧州の政治的な分断を浮彫りにした。

最終的にマクロンが60%の支持を得て大統領に就任するとしても、
ルペンやメランション合わせれば40%以上の人が反EU、反グローバリズムに
一票を投じたことはEUの将来に不安を投げかける。

またこれまで成長VS分配を掲げて戦ってきた二大政党が国民の声を
受け止められなかったことも、仏社会そして欧州が新たな局面に入っていることを
示唆していると言えよう。

その問題の本質が格差そして移民にあり、新自由主義に乗り遅れた
人々の不満が現状破壊的な極右や極左の支持に向かったということだろうか。



ともかくマクロンが5年もしくは10年在任するとすれば
独仏を中心とした欧州の枠組みが当面存続するわけで、
一気に世界がポピュリズムの嵐に飲み込まれることはなさそうだ。

ただマクロンの今後の政治はと言えば与党が存在しない点で
小池百合子同様と言うことだろうか。

「都民ファースト」のようなものを作るのかも含め、どのような内閣を
組閣するのかに関心が移るが、その意味では6月に予定される
国民議会の選挙が注目されるところとなるだろう。

それにしても今回の仏選挙は日本でもリアルタイムに報道され、
また子供の世界にまでルペンやマクロンの名前が広がった。

つまりグローバリズムが世界に浸透しているのは明らかで、
「自国第一主義」は「親の仇」と言っても良いのかも知れない。


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ユーロの反転

トランプ米大統領は日本や中国との貿易赤字の縮小に向け、
「不公正貿易」の調査を商務省などに命じる大統領令に署名した。

同時に「不公正貿易を終わらせるため、必要かつ合法的な措置を講じる」と
宣言したが、米国の貿易収支赤字の元凶として中国、日本とともに
ドイツもその対象となるだろう。

実際これまでもドイツの輸出が過剰であり、経常収支黒字は
2700億ユーロ(約33兆円)とGDP比では8.7%に達しており、
日本の17兆円(3.5%)を大きく上回る。

同時にユーロ相場を操作をしている、つまり通貨安へと
誘導しているとも主張してきた。



ドイツはその批判に対し、①ユーロ安の為替操作を行っていない、
②ダンピングなどにより輸出ドライブをかけていないなどとして、
不当な言いがかりだと主張している。

ユーロ相場は発足以来の20年間において1.60から1.0の
範囲を動いているが、貿易黒字の変化と通貨(ユーロ)の動きの相関度
は必ずしも高くないとの認識も根強い。

またドイツが為替をコントロールしているかと言えば、疑問も残る。

実際ドイツ経済の実力に対してユーロ安であることは明らかでドイツが
大きな恩恵を受けているが、これはユーロが加盟国全体の経済の実情を
反映したものであることからやむを得ないともいえる。

とはいえ日本と同様に、欧州でもECBが非伝統的な手法で金融緩和政策を
実施してきたことは明らかで、その結果のユーロ安になっていることも確かだ。



ドルの価値はドル指数(対主要6通貨の指数)で見ても14年ぶりの
大幅高になっており、引き続き米国サイドからの為替操作国への批判は
続くことになるだろう。

とはいえ為替レートの管理は政策協調により可能とされた時代もあったが
今や経常取引が巨大となったこと、さらに各国が自国を優先させる
傾向が強まっていることからその手法は現実的ではない。

このように考えると対外不均衡是正については為替レートの調整よりも
むしろマクロ経済的なアプローチを積極化するのが正しいのかも知れない。

換言すればドイツの場合輸出が多すぎるのではなく、輸入が少ないのだ。

ドイツでは国内における老朽化したストックに対する公共投資が
不十分で、民間投資もまた足りない。

つまりサービス部門などを中心に投資障壁の撤廃など規制緩和を
優先することが肝要といえるだろう。



このような環境下、ECBは出口戦略の模索を始めている。

まもなくテーパリングを開始することになるが、そうすると
ユーロは1.0を切ることなく反転することになりそうだ。

従ってユーロ高・ドル安への市場の自律調整機能がトランプ大統領の
留飲を下げることに貢献するのではないだろうか。


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欧州統合60年

EUの原点であるローマ条約が締結されて以来60年が経ち、
欧州首脳が記念式典のためローマに集合した。

各国首脳を前にして、ローマ法王は反移民を掲げる
極右の台頭に懸念を示しつつ統合の推進に向けての結束を強く訴えた。

とはいえ60年前のEEC発足時は6か国だったが、
今や英国を除いても27か国。

さすがに共同歩調をとるのは難しくなっている。

とくに①民主主義や人権などについての価値観、②統合の意思の強弱
③統治能力などにおいて大きく足並みが乱れ、バラバラとも見える。

そのような状況を踏まえて「多速度の欧州」、つまり国ごとの統合の
速度の多様化を容認する文言を盛り込んだ共同宣言が採択された。

つまりEU諸国をメジャーとマイナーリークに分けようとの発想だが
これに対してマイナーリーグのポーランド、ハンガリー、ギリシャなどが
異論を唱えている。



英国が3月29日にEU脱退通知を提出し、これから2年間
脱退に向けての交渉が始まる。

まず英国は脱退に当たり分担金など7兆円程度の支払いが求められる
見込みだが、果たしてこの支払交渉はうまくまとまるのか。

また第2の問題として、英国の脱退によりEU予算は1割ほどの
収入減少に見舞われ、各国への補助金が削減される。

したがってその補助金を目当てにしているマイナーの国々の
EUへの反発は大きくなる。

そして3番目が英国のようにEU離脱に触発される国が出てくること。

英国では脱退を決めて9か月を経過したが、案外経済の下振れは軽微で
その他の国にとりEU脱退のハードルは小さく見えるところとなっている。

つまり単一市場へのアクセスを失っても、移民を抑制できるなど現実的なメリットが期待できることから、
英国にならう動きが加速化する可能性も生じている。

このようにマイナーな国々は統合理念よりもそれぞれの国の損得勘定に
目が行きがちだ。



英国の国民投票以降米国発のポピュリズムが欧州を覆っていたが
3月のオランダ議会選で自由党が伸び悩んで一旦その広がりは休止した。

とはいえフランスではFNのルペン党首は25%の支持率を維持し
またドイツでは「ドイツのための選択肢」(AfD)は10%を、さらに
イタリアでは「五つ星運動」が30%の支持率を確保している。

これら欧州統合にNOを突きつけるポピュリズム勢力に対し
EU市民はいかなる結論を出すのか。

今年予定されるフランス、ドイツ、イタリアの国政レベルでの選挙において
国民の投票行動が注目されるところだ。

ps

砧公園は目下一分咲き。




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ルペンリスク

フランス大統領選が4月23日に迫ってきた。

その見通しは、マクロン前経済相(独立系)、フィヨン元首相(中道右派)、
ルペンFN党首(極右)の三つ巴と言われている。

とはいえフィヨン氏は妻そして子供二人が給与を不正受給して
いたことが判明して人気と信用が急落。

5月7日の決選投票にはマクロンとルペンの両氏が進み、
結局マクロンが勝ってEUは安泰と言うのがメインシナリオだ。

したがってルペンリスクは残るものの、市場経済支持派の大統領の誕生
を予想して安心感が市場に広がっているのだが。



ここにきて4位、5位を争う社会党のアモン氏が左翼党のメランション氏
さらにヨーロッパエコロジー・緑の党(EELV)のジャド氏と統一候補について
話し合ったことが明らかになった。

左派候補が一本化されると現在首位を走るマクロン氏の決選投票
の進出が難しくなる。

決選投票がルペンVS左派候補となればルペン当選の可能性が高まり、
ブレクジットよりも一足早くフレクジット(フランスのEU脱退)が現実味を帯びそうだ。



ここは国際金融の安定に向けて是非とも
エマニュエル・マクロン氏の当選を期待したいところだが、どうなるか。

この人のことはよく知らないが、現在39歳で妻が63歳。
妻の連れ子が自分と同じ年齢とか。

マクロン氏が大統領になればフランスの結婚の形態が
話題を呼ぶことになるだろう

思い返せばオランド大統領も事実婚の相手を連れて
国賓として来日し、そのカップルの在り方が日本でも
話題になった。(すでに別れたのがまた凄い。)

どちらにしてもフランスの恋愛・結婚事情は
一日の長がありそうだ。



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クリスマス休暇

世の中はクリスマス休暇に突入し、
正月明けまで市場も開店休業状態だ。

横浜/赤れんが倉庫前の広場は、イルミネーションで照らされ、
木の屋台では、ホットワインや
ソーセージが売られている。

ということで日本でも本場ドイツのクリスマスマーケットの
雰囲気を味わえるので中華街での食事とセットで是非どうぞ。



ところが本場のベルリンでは、公共広場で行われていた
クリスマスマーケットに大型トラックが突っ込み12人が死亡した。

その犯行の容疑者としてチュニジア人が指名手配されているが、
今夏パリ祭のニースでも同様のテロにより84人が犠牲になったばかり。

このような記憶が蘇る欧州で2017年は、オランダ、
フランスそしてドイツで国政選挙が予定されている。

メルケル首相はじめどちらかと言うと移民に寛容な姿勢を示してきた
各国首脳は反移民感情を高める国民の厳しい審判を受けることになる。欧州は波乱含みだ。



一方、米国も負けず劣らずで、トランプリスクから目が離せない。

現状、市場は1月20日に発足するトランプ政権に期待を強めているが、
果たしてこの蜜月関係はいつまで続くのか。

国務長官にプーチン大統領と親しいティラーソン・エクソンCEOが、
そして国防長官に「狂犬」と言われるマティス氏が就任することになった。

このコンビによる米国の対外戦略は、対ロ融和、対中強硬になる
と見られるが、対欧、そして対日への姿勢が未だ見えてこない。

しばらくその見極めに時間がかかりそうで、新年はこれまで以上に
米中欧ロを中心にした国際政治情勢を注視する必要がありそうだ。



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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