EU名誉市民

欧州統合に向けてローマ条約が締結されて60年。

拡大を急いだつけが回っているようで、27か国(英国を除く)に
膨れ上がる一方で、マルチスピードの欧州を目指す方向が
打ち出されるなど各国の足並みの乱れが目立っている。

とはいえここまでの歴史を築くのに貢献した多くの人々のなかでも
僅か3人しかいないEU名誉市民となったジャン・モネ、ヘルムート・コール、
ジャック・ドロールの3人の事跡は特筆されるところだ。



その一人コール元ドイツ首相が87歳で死去した。
その体格から言っても巨星墜ちると言った表現がふさわしいだろう。

その実績については1982年から98年まで独首相として
フランス、ロシアの了解を得て東西ドイツの統一を実現した。

またその代償としてユーロの発足に邁進するミッテラン仏大統領に
全面的に協力し、結果的に現在の欧州での独のひとり勝ちをもたらした。

そして3番目の実績として挙げられるのが東ドイツの物理学者メルケル氏
を見出して内閣に招じ入れ、12年に及ぶ長期政権を維持するような
大政治家を育てたこと。

とはいえ政権末期に汚職が発覚し、晩年は表舞台から身を引いた。

また目下のドイツの繁栄もこの人のライバルであったSPDの
シュミット首相による構造改革のお陰と言う説もある。

ともかくストラスブールでEU葬が行われる見込みであり、
歴史に名前を止める人であったことは確かだ。



一方先週末フランスでは共和国前進が議会の過半数を占めて
ユーロ統合推進者のマクロン大統領の政治手腕が発揮される準備が整った。

今後メルケル独首相との共闘がどのように進むか期待されるが、それでなくとも
英国の離脱交渉が始まったところでEUの視界は不良だ。

果たしてコール首相とミッテラン大統領が作り出したEUを、後継世代の
メルケル、マクロンの二人の首脳はどのように前進させることができるのだろうか。



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マロニエ

ゴールデンウィークが終わるといよいよ初夏。

信州の山々はこれから新緑が映える時期を迎えるが、
まさに「春過ぎて夏来にけらし」の季節が到来する。

梅丘の街を歩いていてピンクの花をつけたマロニエの木を
二本見つけたが、パリの5月を思い出させてくれる。



フランスの大統領選が終わり予想通りとはいえ日本そして世界の
メディアは仏の知識人へのインタビューを含め様々な論説記事を載せていた。

最も印象に残ったのはFTのヨーロッパエディターが「未完の勝利」
と題した記事。

ちょっと大げさのような気もするが昨年のブレクジットで不本意な結果
となった英国人はこのように考えるのか。

つまり、仏国民がグローバル主義や国のアイデンテティについての
考え方の小異を捨て、開放性や寛大さそして国際主義において
団結して今回の結果をもたらしたと称賛している。

また今回の選挙は1789年以降の仏の歴史の中で、「前進」と「反動」
を巡る壮大な闘いの一つとして語り継がれるだろう、とこれまた大げさな表現が。

さらにマクロンの勝利は、「ドレフュス事件」でドレフュス大尉が
苦労の末に反ユダヤ主義に打ち勝ち、正義の勝利を得たことを
思い起こさせるとも書いている。

今回の選挙が後世こんなに大きな歴史的事件と振り返られる
のかよく分からない筆者としては少し困惑してしまうのだが。



どちらにしても欧州そして世界が安堵した結果になったことだけは
確かだ。

実際4月24日の第1回投票で親EUのマクロンが決戦に残り
勝利が見えて以来金融市場はすでに2週間にわたりお祭り
状態が続いている。

とはいえ国内的には失業率が2桁台の仏の経済再生は喫緊の課題であり、
また対外的には「マルチスピード式」の発展を模索しているEUについて
先行組と弱小組の2極化への対応が図られることになる。

またユーロ統合推進派としてのマクロン大統領が、今後ユーロ圏の
議会創設と共通予算と言った問題をどのように現実化させるのかも
注目されるところだ。

昨年6月のブレクジットに始まったポピュリズムが蔓延する悪夢の1年が
過ぎ去った今、EUは明るい未来に向けて前進できるのだろうか。

このところ下落傾向を辿つてきた通貨ユーロが中期的に上昇トレンドに
戻るか否かは、EU統合への足取り次第となるだろう。

仏大統領選3

仏大統領選が終わり39歳で政治経験3年の大統領が誕生し,
ルーブルのピラミッド前で勝利を祝う映像が日本でも流された。

それにしても開票直後の速報は得票率65.1%とほぼダブルスコアでの
当選が報じられたが、その速報性と正確さには改めて驚かされた。

とはいえこの結果は第一回投票時から織り込まれたものであり
市場には安堵感が広まるものの大した影響はない。



それにしても今回の仏大統領選ほど日本で報道されたことは
なかったし、また注目されたこともなかった。

それだけ昨年のブレクジットそしてトランプ大統領誕生と
ポピュリズムの潮流に世界の政治体制への危機感が
世界中で充満していたせいだろう。

またトランプ大統領がルペンをそしてオバマ大統領がマクロンを
支持したように一国の政治の行方が世界に影響を与えるのも
グローバリゼーションの結果と言えるだろうか。

やはり昨年の英国の国民投票は生煮えで短絡的な判断だったとも
思えるし、EUへの嫌悪感と移民への恐怖が大きいということでもある。



ともかく1年にわたった政治的不安定が一端収束した今は
どうしても64歳のブリジット夫人に目が行ってしまう。

16歳の生徒と41歳の教師との恋愛事件は日本でなら
さぞやスキャンダラスに取り扱われたことだろう。

フランス語そしてフランスの文化においてはこのような恋愛が
可能になるとの説もあるようだが。

しかし日本の文化そして言語下においては非現実的出来事としか
見えないのも日仏の言語と文化の違いと言うところか。

今後マクロン大統領の課題は、①EU官僚の横暴について、②移民による治安の
悪化についての国民の不満の解消が優先事項のひとつになるだろう。

具体的な施策遂行において6月11日、18日の国民議会選挙が注目される
ことになるが、IMFのラガルド専務理事が首相候補に挙げられている。

青年大統領と女性首相のコンビは悪くなさそうだが
果たしてどうなるのだろうか。



..

仏大統領選2

昨年6月の英国民投票、11月の米大統領選と立て続けに世論調査が
はずれたが、今回の仏大統領選は思いのほか世論調査通りとなった。

さらにこの一年ポピュリズムと反グローバリズムの嵐が世界を飲み込み
かけたが、その懸念も5月7日の結果を待つまでもなくひとまずやんだ。

お陰で市場ではVI(恐怖指数)は一気に下落し、予想以上に
広がっていたリスクオフの動きが巻き戻されて仏の株式市場も
4%上昇するなど安心感が広がった。

ともかく仏がユーロから離脱してフランに戻り、その価値の下落が
回避されたことにはひとまず胸をなでおろした。

したがって退蔵している星の王子様を描いた50フラン札を使う
機会を逸したのだが、ユーロが強くなるのは歓迎だ。



予想通りとは言え4人が混戦だったことは、改めて
仏そして欧州の政治的な分断を浮彫りにした。

最終的にマクロンが60%の支持を得て大統領に就任するとしても、
ルペンやメランション合わせれば40%以上の人が反EU、反グローバリズムに
一票を投じたことはEUの将来に不安を投げかける。

またこれまで成長VS分配を掲げて戦ってきた二大政党が国民の声を
受け止められなかったことも、仏社会そして欧州が新たな局面に入っていることを
示唆していると言えよう。

その問題の本質が格差そして移民にあり、新自由主義に乗り遅れた
人々の不満が現状破壊的な極右や極左の支持に向かったということだろうか。



ともかくマクロンが5年もしくは10年在任するとすれば
独仏を中心とした欧州の枠組みが当面存続するわけで、
一気に世界がポピュリズムの嵐に飲み込まれることはなさそうだ。

ただマクロンの今後の政治はと言えば与党が存在しない点で
小池百合子同様と言うことだろうか。

「都民ファースト」のようなものを作るのかも含め、どのような内閣を
組閣するのかに関心が移るが、その意味では6月に予定される
国民議会の選挙が注目されるところとなるだろう。

それにしても今回の仏選挙は日本でもリアルタイムに報道され、
また子供の世界にまでルペンやマクロンの名前が広がった。

つまりグローバリズムが世界に浸透しているのは明らかで、
「自国第一主義」は「親の仇」と言っても良いのかも知れない。


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ユーロの反転

トランプ米大統領は日本や中国との貿易赤字の縮小に向け、
「不公正貿易」の調査を商務省などに命じる大統領令に署名した。

同時に「不公正貿易を終わらせるため、必要かつ合法的な措置を講じる」と
宣言したが、米国の貿易収支赤字の元凶として中国、日本とともに
ドイツもその対象となるだろう。

実際これまでもドイツの輸出が過剰であり、経常収支黒字は
2700億ユーロ(約33兆円)とGDP比では8.7%に達しており、
日本の17兆円(3.5%)を大きく上回る。

同時にユーロ相場を操作をしている、つまり通貨安へと
誘導しているとも主張してきた。



ドイツはその批判に対し、①ユーロ安の為替操作を行っていない、
②ダンピングなどにより輸出ドライブをかけていないなどとして、
不当な言いがかりだと主張している。

ユーロ相場は発足以来の20年間において1.60から1.0の
範囲を動いているが、貿易黒字の変化と通貨(ユーロ)の動きの相関度
は必ずしも高くないとの認識も根強い。

またドイツが為替をコントロールしているかと言えば、疑問も残る。

実際ドイツ経済の実力に対してユーロ安であることは明らかでドイツが
大きな恩恵を受けているが、これはユーロが加盟国全体の経済の実情を
反映したものであることからやむを得ないともいえる。

とはいえ日本と同様に、欧州でもECBが非伝統的な手法で金融緩和政策を
実施してきたことは明らかで、その結果のユーロ安になっていることも確かだ。



ドルの価値はドル指数(対主要6通貨の指数)で見ても14年ぶりの
大幅高になっており、引き続き米国サイドからの為替操作国への批判は
続くことになるだろう。

とはいえ為替レートの管理は政策協調により可能とされた時代もあったが
今や経常取引が巨大となったこと、さらに各国が自国を優先させる
傾向が強まっていることからその手法は現実的ではない。

このように考えると対外不均衡是正については為替レートの調整よりも
むしろマクロ経済的なアプローチを積極化するのが正しいのかも知れない。

換言すればドイツの場合輸出が多すぎるのではなく、輸入が少ないのだ。

ドイツでは国内における老朽化したストックに対する公共投資が
不十分で、民間投資もまた足りない。

つまりサービス部門などを中心に投資障壁の撤廃など規制緩和を
優先することが肝要といえるだろう。



このような環境下、ECBは出口戦略の模索を始めている。

まもなくテーパリングを開始することになるが、そうすると
ユーロは1.0を切ることなく反転することになりそうだ。

従ってユーロ高・ドル安への市場の自律調整機能がトランプ大統領の
留飲を下げることに貢献するのではないだろうか。


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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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