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壺中の天

昭和の陽明学者・安岡正篤の教えである「六中観」に
忙中閑あり、苦中楽あり、死中活あり、壺中天あり、
意中人あり、腹中書あり、とある。

それぞれ含蓄に富むが、とりわけ「壺中(こちゅう)天あり」は好きな言葉である。

この出典は後漢書に記された故事に求められるが
小売商が毎日仕事の終わった後で小さな壺の中に入る。

そこは他人には推し量れない大きな宇宙、つまり自分らしく
生きる別天地がある、と言った意味である。



過日小学校4年生の仲邑菫さんがプロ棋士になった。

本来プロ入りに課せられている経験と試験を免除されて、
中韓に対抗するための早期育成枠の第1号になったのだ。

これから361マスの狭い盤上に自分の宇宙を作る
ことになるが、その重荷に少しかわいそうな気がしないでもない。

それは81マスに自らの世界を創造する藤井七段も同様で、
この人たちはヒフミンのように盤上に宇宙を感じながら生きることになるのだ。

しかしそこは一見狭い世界と見えても、実はとてつもなく大きいに
違いないのはまさに壺中の天と言うことだ。



翻って日々小さなスマホの画面に見入り一日の多くを
相場のことを考えている筆者の場合はどうか?

その姿を第三者が見れば10センチx4センチの狭い 
世界に何を見てるのかと不思議に思うかもしれない。

しかしこの狭い画面こそが筆者にとって壺中の天なのである。

その無機質で数字の羅列されたスマホの世界は実はウオール街そして世界隅々の
森羅万象に直結しており、北京で蝶が舞うだけで
リアルタイムに人々の恐怖と欲望が伝わり姿を変えるのである。

その複雑さや醍醐味を詳細に説明するに十分な言葉を持たないが
まさに一見小さくても実は大きな世界なのである。

もはや壺の中から抜け出せなくなって久しいが、国際金融特に
それを凝縮した相場変動は膏肓に入った病と言ったところだ。




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2019年は

クリスマスが目前に迫り今年も残すところわずかとなった。

日本は別として多くの企業はBOOKを閉じる時期でもあり
ファンドの手じまいの動きも散見されるなど金融市場の動意は薄れてきた。

本年をおさらいすれば、米国の株価(昨年末24,700ドル、現在24,300ドル)
そしてドル円(昨年末112円70銭、現在113円30銭)とも小動きで終了しそうだ。

あえて動きがあったとすればイランや減産を巡り
上下した原油相場(昨年末60ドル、現在52ドル)か。

そして米国債市場だろろうか(昨年末2.4%、現在2.9%)。

一時3.2%を超えたが、FRBの引き締めも今年があと1回、
来年も1回と打ち止め感も意識されるようになり低下局面に入ったようだ。

この3年間でテーパリングさらには引き締めと上昇したが
それも一服、来年の金融市場の動向に大きな影響を与えそうだ。




それでは来年の材料としてFRBの金融政策以外に何が挙げられるだろうか。

世界の中銀トップが異口同音に懸念するように来年のテーマは
「世界経済の下振れとリスク勃発」か。

実際米中問題、ブレクジット、イランそしてロシアなど様々な
リスクの芽が内在しておりその表面化は、経済成長を大きく損なうことになるだろう。

とりわけ懸念されるのは米中貿易戦争の行方だ。

とりあえず米国による輸入額2000憶ドルへの追加関税は
90日間の延長が決定されたもののその期限は2月末に迫る。

クドローNEC委員長などの発言は期待を持たせるが、
ナバロ大統領補佐官やライトハイザーUSTR代表などの
対中強硬派の発言は今後の厳しさを予感させる。



一方日本の周辺を見渡すと、来年1月にはイザナミと呼ばれる
好景気がイザナギを超えて戦後最長になる。

実感が乏しいのがその特徴だが、曲がりなりにも実現された
景気拡大もいよいよ腰折れしそうな雰囲気だ。

バブル景気の最後に見られたような改元効果ぐらいしか
明るい材料がない現状今後の見通しは暗い。

つまり展望の見えない2019年は景気減速
そして大幅な円高の到来は必至か。


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忖度

米国が金融正常化の道を歩み始めてはや3年、
すでにFF金利は8度引き上げられてゼロから2%に。

そして年内にもう一度さらに来年は
3回程度引き上げられ2020年に
打ち止めになると見られてきた。

このような環境下、「低金利が好きだ」と言うトランプ大統領は
パウエルFRB議長を非難し、同議長を推薦したムニューシン財務長官につらく
当たっているとも言われてきた。

そんなパウエル議長は10月3日には「中立金利から程遠い
(long way from neutaral)」とタカ派的発言をしていた。

ところがパウエル議長は昨夜「広義の中立金利をわずかに下回る
(just below the broad range of estimates of the level that would be neutral)」
とややハト派的な発言を行った。

お陰でドル買い、債券売りに傾いていた市場は過敏に反応し、
その結果パウエル氏についてトランプ大統領に気遣いを見せる
「忖度議長」と批判する声が上がった。

つまり来年度中の利上げは1度だけとの
見方が俄かに強まっているのだ。
果たしてどうなるのか?



中立金利については景気を刺激するでもなく抑制するでもない
まさに中立的な金利と定義される。

その適正水準については意見が分かれるが、現在の
米国においてはその範囲は2.5%~3.5%、つまり3%ぐらいではないかというのが支配的。

どちらにしてもトランプ大統領の牽制がなくとも金利引き上げの余地が
なくなりつつあるのは確か。

つまり依然世界が低金利にある状況からすれば、米ドルが
高金利通貨となり日々世界の金が集まってくるのは
至極当然というところだ。



中間選挙も終わりいよいよトランプ大統領は2年後の
大統領選へと動き始めた。

それでなくとも雇用の拡大を第一義にするだけに
物価の安定にも配慮するパウエル議長が気に入らないのも確か。

さらにリストラ計画を発表したGMもまた同じ。

そして中国も気に入らない。

12月1日には米中首脳習会談。

トランプ大統領は実は習近平好きとも言われる。

それだけに米中貿易戦争の終結を期待する向きもあるのだが?

年内もあと1か月。

112円70銭で始まった2018年はドル高で終わるのか
ドル安で終わるのか最後の攻防が始まる。

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115円シーリング

2015年6月円相場が125円に達した時に黒田日銀総裁は
現行水準は実質実効レートで見れば円安だ、と語った。

その後円相場は一端100円割れをみたが再び切り返し
今年に入って以降は105円~114円で推移し目下112円台。

同時に過去1年半4度ほど115円をトライしたが
ことごとくはじかれて115円がシーリングに見えるのが実情だ。



先週末ムニューシン米財務長官は物品貿易協定(TAG)交渉において
「為替条項」導入に言及し、日米においてもNAFTA同様為替の縛りを
盛り込む意向を示した。

それについて日本の麻生財務相や茂木経済財政相などからこれまでに
交渉の経緯が無いことはじめ全面否定の発言が行われているのではあるが。

一方今週中には米財務省が為替報告書を議会に送ると見られている。
その中で為替監視国の中国や日本の取り扱いが注目されている。

中国については為替操作国と指摘されるのか否かが最大のポイント。

そして貿易黒字をため込み円安誘導疑惑がつきまとう日本が
引き続き為替監視国に挙げられるのか注目されるところだ。



現在の金融市場は米国がトランプ減税で財政悪化をものともせずに
バラマキを行って景気浮揚を図り、一方で金利の高め誘導を行っている。

他方日本は日銀がハードランデイングを回避しながら出口戦略を進める
ナローパスを探っている。

つまり日米金利差は大きいままであり、当然のこととして
米ドル買い円売りが進む。

その結果円は名目的にはさほどではないものの、実質実効レートベースでは
史上まれにみる円安水準となっているのだ。

そろそろ円高への大調整が起きてもおかしくないと思っているが
原油高や年末の季節要因もありそのタイミングを推し量るのは難しい。

とはいえ過日株価大調整があったように6年続いた円安も新たな
局面へと進んでもおかしくないように見える。

とすればムニュー―シン・シーリングとも言われる115円が
本当に存在するのか否かのマーケットの挑戦が注目される。



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ドル安論者

戦後米国主導で国際連合が設立されまたIMF・世銀体制が構築された。

そして例年9月末には国連総会が行われ世界の首脳がワシントンに
集合したことから様々な重要案件が決定された。

したがって固定相場制度下にあった通貨についても、
この時期には多角的通貨調整が行われることが多く、
9月~10月は「通貨の秋」と言われることになった。

1973年の変動相場制への以降の後も9月は為替相場の
大変動がたびたび発生したたことから、「通貨の秋」は死語と
なるどころか、今もアノマリーとして生き続けている。



今年もまた9月25日から国連総会が始まる。

これを前に24日にはワシントンでFFR(日米通商協議)が行われる。
また安倍首相は渡米し9月26日にトランプ大統領との首脳会談に臨む。

これらの会議のテーマは通商問題、とりわけ日米間に存在する
貿易不均衡だ。

その是正は中間選挙を控えて支持者を慰撫したいトランプ大統領としては
絶好のチャンスである。

一方日本政府はドナルド・シンゾウのデレデレ関係を維持し、
為替への言及を避け何とかやり過ごしたいとの思いがにじむのだが。



それでは米国側から為替への言及はないのか?

これまでトランプ大統領は「合意がなければ日本は大変なことになる」などど
脅迫的なツイートを行っているだけに為替問題が俎上に上がる恐れはある。

もともとトランプ大統領は「ドル安論者」だ。
とはいえこれまでのところ為替に関する発言は抑制的である。

また口が滑った場合にはムニューシン財務長官がいつも
火消しに努めてきたのであるが。

9月23日と言えば33年前、レーガン大統領の貿易不均衡を
是正したいとの意向を受けてプラザ合意を経て
未曾有の円高が始まった日でもある。

果たして今年の「通貨の秋」は何が起きるのだろうか?



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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