嫌い嫌いも

日本の失業率は2.8%と完全雇用状態にあるが、
米国も4.5%と一時の9%台からずいぶん改善。
米経済はかなり良い状態で、早期利上げが見込まれている。

したがって大統領選中以来トランプ氏はイエレンFRB議長の
超金融緩和策を批判してきたが、どうも雲行きが変わってきた。

あれだけ「嫌い嫌い」と言い続けたきたのに、それも「好きのうち」
だったのかも知れないのだ。

2018年年3月に任期切れとなるがその続投もありうる可能性が高まった。



それにしてもトランプ大統領の発言はぶれやすく
ついて行くのは大変だ。

あれだけ重用していたバノン首席補佐官を更迭目前に追い込んでおり、
またロシアとの蜜月は一転して険悪化、さらに敵対していたはずの
中国とは仲良くなったり。

また曖昧さを残していた為替問題についても今やドル高は
耐えられないとしてドル安志向を明らかにし始めた。

これから日米経済対話が始まる。

日本は為替問題や二国間FTA問題を避けて通りたいと考えているが、
米国は直球勝負に出てくるようで、今後ドル安が進む可能性が高まってきた。



一方ルペンVSマクロンの決戦投票でマクロン圧勝で無風と見られた
フランス大統領選も急速に風雲急を告げだした。

近頃の世論調査では、ルペン24%、マクロン23%、メランション19%、
フィニオン18%と極左のメランションが急速に支持を広げて混戦に。

場合によってはルペン、メランションの左右決戦になる可能性が浮上。

脱EU、脱NATO、富裕層への課税を掲げるメランションと脱EU、反移民のルペンが
1,2位を占めれば、世界の政治そして金融市場が大混乱をきたすのは必至。

はたしてどうなるのか。

フランス国債の金利がすでに上昇傾向を辿りだしたが
そうなれば欧州の混乱はかつてのギリシャや英国離脱の比ではなさそうだ。

北朝鮮、日米経済対話、フランス大統領選と日本の周辺は
緊迫してきたが、国内は春の陽気に誘われて至って平穏。

実際日本のマスコミと言えば浅田真央の引退ブログから4日を経過
しても相変わらずの関連情報の垂れ流し状態。

「真央ちゃんってそんなに偉大だったの?」などと発言すれば
どのようなバッシングを受けるかも知れない。

それが平和日本の掟なのだ。



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YCC

昨年9月に日銀はYCC(イールドカーブコントロール)を導入し
短期をマイナス金利に長期(10年)をゼロ%近辺にすることとし、
イールドカープをスティープにすることを政策目標とした。 

これは量的・質的「緩和」なのか?それとも「緩和」ではなく出口戦略
つまり「テーパリング」になるのか?という疑問も生じる、
難解な政策だ。

もともと日銀の役割は短期金利の操作が本業で、中銀が長期金利を
コントロールできる機能を備えているのか分からないところでもある。



ともかく長期金利がゼロ近辺で推移してきたが、米国金利が上昇する中で、
日米金利差が開き、ドル高円安につながっているのは否定できない。

そしてECB(欧州中央銀行)がテーパリングへと前進する動きがあり、
米国ではテーパリングを終え、次のステップであるFRBの資産圧縮への議論が高まっている。

リーマンショック以降の非常事態に際し、導入された非伝統的な金融政策で
未曾有の低金利が醸し出されてきたが、既に8年を経過。

世界の金融市場が正常化に向け動き出した今日本の金融政策も
海外から市場を通じて金利上昇圧力がかかるのは当然だろう。

過日は10年債金利が0.15%と一年前の水準に上昇し
日銀は慌てて指値オペに出動するなど長期金利の抑え込みに必死。

ということで、日銀はYCCにより金利を抑え経済活性化を第一目標に
しているようだが、果たしてトランプ政権は日銀の金融緩和策を
認めてくれるのか。



したがって日銀の緩和政策の行方が次のテーマに
なるのだが、当面はYCCに注力する見込みだ。

しかしトランプ大統領誕生により始まった円安に対して調整が本格化した場合、
またぞろ緩和策を待望する議論が巻き上がる可能性もある。

現在112円台の為替の先行きを政府・日銀はハラハラ
見守っているということだ。




ABCDリスク

米大統領選まで2週間余りとなったが、トランプの失投が
続くなかで勝敗は決したとの雰囲気が強まっている。

実際アイルランドのブックメーカーはすでにクリントンに
賭けた人に支払いを始めたようだ。

ということでトランプリスクが減じた今、金融市場は
リスクオンの気配を強めている。

日本でも今月初めから為替市場では8日連続して円続落となり
また株式市場もゴールデンクロスを描いて、いよいよ円安・株高の
再現期待が高まっている。

バスに乗り遅れまいとする風潮も強まっているが、しかし世の中
そんな簡単にシナリオ通りになるだろうか?



現在の市場をとりまくリスクに何があるかと問えば
それはABCDリスクと言われるものだ。

すなわちA(米国の利上げの新興国への影響)、B(ハードブレクジットの影響)、
C(チャイナリスクの表面化)そしてD(ドイツバンクほか欧州金融機関の経営懸念)だ。

なかでもCのチャイナリスクについては同国の統計数字が
信頼できないだけにかなり危険だ。

特に政治が優先し経済は従属するものとされるだけに、
共産党や国務院が絶対6.7%成長を達成すると言えば
そのようになるということだ。

したがってかなりアクセルをふかしすぎていることは明らかで、
実体は輸出額の減少や不動産バブルの破綻可能性が気にかかる。

特にチャイナリスクは一朝起きればテールリスク、つまりリスクの
大きさはマグニチュード9クラスだけに要注意だ。



ということで万が一上記リスクのどれか一つが表面化した場合、
世界への影響度が計り知れないだけにくれぐれも留意しておかねばならない。

「虎穴に入らずんば虎児を得ず」か「備えあれば憂いなし」か
いつもながらにリスクテイクの塩梅は難しい。

ともかく「人の行く裏に道あり 花の山」をひたすら念じる筆者は
ドル急落の火種を探し続ける今日この頃だ。


ビットコイン

ビットコインはサトシ・ナカモトという人物の名前で、2008年に
インターネット上に掲載された文書を基礎とする「決済システム」だ。

ただ日本人にとってのビット・コインと言えば、先般東京の取引所Mt.Goxが
破綻した事件を連想することから印象はとても悪い。

また価格が乱高下することからこの仮想通貨の利用価値は
投機目的にしかないとの否定的な意見も多い。

しかし実際にはアルゼンチンなど通貨価値が不安定な国では
成長余地が高く、また利用者はコスト節減などメリットがある。

例えば10万円程度の外国送金をすれば数千円の銀行手数料が
かかるが、ビットコインによるネット送金なら5円程度のコストで済むなど
実用価値を評価する向きが増大しているのも事実だ。



このような状況下、今週から電力小売業に参入したガス会社が
(この社長は筆者の知人)ビットコインでの料金支払いを可能にした。

つまり日本で初めて公共料金がビットコインで支払い
できるという大きな一歩が刻まれた。

これを機に今後日本においてどのようにビットコインが
認知され実用化されるのか注目されるところだ。

実はこれまで「中央銀行が終わる日ービットコインと通貨の未来」
(岩村充)などいくつかの著書を読んだが今一つ分からないでいる。

そのコンセプトはハッシュ関数と暗号から出来ているとのことだ。

一方金融論の視点からすると、これは中央銀行の管理下にはない
仮想通貨である点でこれまでの通貨と異なる性質のものだ。

したがって将来性について通貨に代替するシステムへと発展する
可能性を秘めているのか否か定かでない。



ビットコインについては成長スピードも速く、したがって議論も
これまでは通貨としての基本概念に終始していた。

しかしここにきて実用化についての議論へと発展しているようだ。

つまりこのシステムはスタートして8年を経過した今
着実な成長を遂げているということだろう。

ただ新しいものには創業者利得がある一方で
どのようなリスクが潜んでいるかも知れない。

やはりここしばらくはその発展を見守るということだろうか。



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総括検証

2013年4月に導入された異次元緩和について
日銀は「総括的な検証」を行った。

黒田日銀は2年で2%のインフレ目標達成をかかげ、デフレマインドを
払拭するために量的緩和を進めてきたが3年半を経過しても達せず、
副作用への懸念が強まる中での検証となった。

結論から言えば、これまでの政策を(失敗と自己批判することなく)
「合格」と評価しつつ、量的金融政策から金利を誘導目標とする
ことととし、
また短期決戦から持久戦へと転じた。



この間日銀は、長期国債を年間50~80兆円も買い上げて
日本のマネー構造を根本的に変えてしまおうとする社会的実験を行ってきた。

財政赤字国日本には1000兆円近くもの膨大な国債が出回っているとはいえ
日銀の買い入れで流動性は枯渇しつつあり、量的限界が取りざたされるところになっていた。

また日銀の資産も大量の国債に300兆円超と膨れ上がり、
含み損の増大による経営の悪化も懸念されるところとなっていた。

しかしその効果は、日銀の意図と異なり銀行の当座預金が積みあがるばかりで
市中にマネーは出回らず、企業活動も活発化しない。

したがって給与も上がらずインフレ率は0%水準を横這い、結局一時的に
円安・株高となったもののまたぞろデフレマインドが高まっているのが現状だ。

もはや期待形成という黒田マジックのトリックがばれてしまった今、
今後いかなる手段が講じられようとも金融政策の限界が露呈した。



今後日銀は従来の「量」から「金利」を誘導目標と
することとし、10年債をゼロにそして短期を緩和し長期を高め誘導する
「イールドカーブ・コントロール」を目指す。

また「オーバーシュート型コミットメント」、つまり市場にインフレマインドが
植え付けられるまで引き続き2%目標達成に向けて量的緩和を行うこととした。

ともかくマイナス金利の深堀は先送りされ、多少超長期金利が上昇するなら
金融機関は最悪期を脱出できる点では良かったかも知れない。

しかしこのような中央銀行の技術的・専門的な金融政策の評価は
市場の理解を超えることもあり、この施策が円安・株高への切っ掛けになるとは
思えず、また日本経済が再生されることにはつながらないだろう。

今回の検証ではうまく糊塗されているが、「異次元緩和は失敗した」ことははっきりしている。

これまで挫折しらずの黒田総裁は今回も負けを認めなかったが
黒田総裁のサプライズ戦略を含めたマジックはもはやここまでか。

日銀の市場支配力はかなり減少したことは明らかだ。



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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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