アルゴリズム

先週末(2日)発表された米国雇用統計において平均賃金が
2.8%へと改善したことが好感されて金融市場は一気に上昇。

しかし明るい未来が開いたと思ったのも束の間、
金利上昇が嫌気されて株価がまさかの下落に。

お陰で利食い売りが殺到して金融市場は一気に
リスクオフムードになった。

そして翌月曜日(5日)のNY市場の後場遅く、僅か数分の間に
1000ドルを超える下落となり、その後半値戻し、またまた下落と
up downを繰り返し、1日で1200ドルと史上最大の暴落となった。

その荒れ相場は翌火曜日(6日)東京市場にも波及し、
ITバブル崩壊以来という1日1500円の下落を示した。



そもそも月曜日のNY市場の乱高下と大暴落の背景には
アルゴリズムが大きく作用した。

つまり数学的に編み出された売買手法が起動して
HFT(High Frequency Trading)つまり高速回転取引や
ストップロス取引が大量に執行された。

これまでもアルゴリズムが相場の大幅変動の理由として
指摘されてきたが、今回の荒れ相場の犯人はやはりアルゴリズム
だったと言うことだろう。



ここ2~30年の金融市場ではアルゴリズムのほかにレバレッジ
そしてAIなど数学・金融工学を応用した手法が導入されている。

その一つであるレバレッジが縦横に組み込まれた市場では上げ相場はより上がるし、
下げ相場では収縮が加速化して暴落を誘う。

今回についても、利喰えるものは何でも売ろうと
人の判断がまず働いて米国株に続いて米国債、日本株、そしてドル円と
売りのオンパレードとなった。

それに触発されて人の開発したアルゴリズム、レバレッジが変動を加速させたということだろう。

ともかく今後も人間が生み出した様々な科学的な仕組みが
人智を超えた動きをするのは間違いなく、人はそれを制御できなくなりつつあると言うことか。


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デジタル通貨

近頃ビットコインはじめデジタル通貨(=仮想通貨)の
話題が賑やかだ。

過去1年で20倍ぐらいに価格が上昇し、
日本においても取引所は20社に及ぶなど乱立気味だ。

これらは金融庁の免許制ではなくただの登録制で、
コインチェック社にみられる通り大学生でも開設できる代物なのだ。

特に当社はお笑いタレントの出川哲朗のインパクトある
TVコマーシャルで筆者も瞠目していたのだが、過去1月半で
売り上げを10倍に伸ばしていたとか。

案の定顧客の500億円相当のNEM
がハッキングされてしまったのだからさらに驚いた。



過去1年急成長するデジタル通貨については、JPモルガンの
ダイモンCEDが「詐欺」と呼びまた日本円を発行・管理する
黒田日銀総裁も疑念を呈していた。

一方で野口悠紀雄氏はその成長性にいち早く着目し、
これまで国家・中央銀行が発行・管理し、都合よく印刷される
従来の通貨に代わるべきものとしてその成長性を指摘していた。

実際日銀OBの岩村充の「中央銀行が終わる日」という刺激的な本が
出回ったりと、新たな通貨への期待感が膨らむのも当然だ。



通貨には価値の尺度、価値の保存、価値の交換・決済の
3つの役割があると考えられている。

この観点で言えば日本などの先進国つまりドル、円、ユーロなど
通貨制度が発展しているところは現行の制度でも運用することは可能だ。

しかし金融制度発展が後発的な段階にあり、また自国通貨の信頼性の
乏しいアルゼンチンや中国などでは後発故に今後の発展の余地も大きい。

つまりデジタル通貨の未来は捨てがたいものがあると思われるが
現状は投機性が高いことそして規制・管理もされずに野放図であること
からl当面様々な事件が発生するだろう。

したがって2月のG20でもこの管理が議論される予定だ。

現状問題含みではあるが、将来性の点では「新たな通貨の誕生」は
明らかで当面騒動は頻発するとしても普及して行くことは
間違いないだろう。


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神意と人為

若林栄四著「人為バブルの終わりー2018年日本を襲う
超円高・株安・デフレの正体」を読んだ。

著者は1970年代のシンガポール時代に「MAD DOG(狂犬)」と言われ
EUROMONEYで取り上げられた伝説のディーラー。

銀行時代の筆者に相場のイロハを叩き込んでくれた先輩だ。

そして1980年代半ばのニューヨーク勤務時代に退職し、
それ以来「マンハッタンの預言者」と言われて今日に至る。

そして未だに日本に教祖と崇めるファンも多く、定期的に帰国しては
講演会を催しているが、その予測確率は疑問としても
歯切れの良さが好評で、お年寄りを中心に人気は相変わらずだ。



近著によれば、相場は神意が決めるもので
目下の世界的な株高や円安などは世界の中央銀行が
無理やり人為で作り出したものだと断罪し早晩神の怒りに触れるとのこと。

その結果として円は今夏には90円、2022年には65円。

株価についても日経ダウ、米国株ともに30%以上の調整があり
どちらも15000水準へと大幅下落すると予想している。

また人為バブルの張本人であるイエレン議長については、
インフレ率が上昇しないことを「コナンドラム(謎)」と呼ぶ姿に
大局観がわかっていない「ただのおばさん」だと切り捨て。

またトランプ大統領のことも「暗愚の帝王」と呼んで、こんな男を選んだ
米国そして米国民に不幸が訪れると予想し、米国売りを推奨。

さらに日銀のETFの購入による株価操作については、前代未聞の行為として
タブーを破った黒田日銀やアベノミクスの成功を吹聴する安倍首相らにも
鉄槌が加わるとも。



ともかく相変わらずの健筆と言うか、毒舌というか、言いたい放題。
さすが組織にしばられることなく長く相場を語ってきた人の
歯に衣着せぬ様子には脱帽。

とはいえ為替市場には大勝、圧勝などはなく2勝1敗1分けが
あるべき姿で、傲慢に陥ることを戒めて感謝こそ優先させるべきだと
殊勝に語る一面も。

ご本人もさすがに老成されたかとも思うと同時に、今後も
ニューヨークから目から鱗が落ちるお告げをお願いしたい。


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米国債

1月10日ブルームバーグは、中国が外貨準備の運用について
米国債への投資を減額もしくは停止することを検討しているとのニュースを伝えた。

これは米国債および株価の暴落につながるとの連想から
米国債の長期金利が2.6%へと急上昇した。

翌日中国政府はその報道は事実無根だとしたことで
金融市場は一服したが、米国の財政赤字も中国次第との
思いを強くさせられたのである。

同時にこのような情景に既視感を覚えたが、それは20年前に
橋本龍太郎首相(当時)が「米国債を売りたい」と発言し
物議をかもしたことである。

当時の日本は今の中国のように米国に対する影響力を
保持していたのだと懐かしく思ったのである。



ところで今年の金融市場のテーマは世界の中銀がどのように
非伝統的金融政策を脱して正常化を進めるかだ。

このような状況で米国の債券市場は注目を集めているが、
2月からパウエルFRB新議長が登場するだけに金融政策の
大きな変化の可能性を否定出来ない。

ECBも同様に出口戦略へと舵を切っていることから、これまで出口戦略を否定してきた
不動の黒田日銀に対する関心は国内外において高まるばかり。

先日は日銀が超長期債の買いオペを見送ったことから
一気に円高となったように、今後日銀の立ち居振る舞いが
世界の耳目を集めることになるだろう。



その日銀では黒田総裁の任期が来る4月に満了となり
その後任人事が注目されている。

すでに5年にわたった量的緩和策の壮大な社会実験は奏効せず、
金利を下げればさげるほど金融機関の貸し出し意欲を減退させて経済は減速する。

つまり「リバーサルレート」と言う金融緩和策がマイナス効果を
生み出すとの現象である。

それではどうするかと言えば黒田氏の早期退陣であり
仮に続投をしても任期途中で交代するというシナリオだ。

どちらにしても過去5年の円安・株高を狙った異次元緩和の
政策の破たんは明らかで、白川時代への回帰そして金利上昇に至るのではないか。

2018年は日米中銀ともにトップが変わるだけに、両国の
金融政策変更には要注意するにしくはなしだ。



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大いなる安定

今年も残すところ50日余りとなり、そろそろ今年を総括し
来年のことを考える時期に達した。

2017年のドル円相場を振り返れば、トランプ大統領による
インフラ投資と大型減税への期待から118円台の高値で始まった。

しかしその後は政権への不信そして北朝鮮リスクへの不安から
下押しされ、結局107円から115円の間を
3往復する一進一退が続き目下113円辺り。

このまま越年すれば1年を通した値幅は10円程度で
比較的変化の乏しい1年だったということになるだろう。



そもそも相場は購買力平価を中心に期待と不安が綱引きしては
乱高下するが、最終的には需給が決定するものだ。

ただ需給には実需、仮需、投機の3種類あるが、短期・中期的には
投機の影響が大きいが、長期的には実需が決定要因になる。

2012年からの3年間にわたった70円台から120円台へのドル高も
アベノミクスの影響と言われるが、実際のところは原発停止よる原油輸入
増大による為替需給のタイト化が大きく影響した結果だ。

一方この2年は右肩上がりのトレンドは消え、
100円~120円レンジでの安定的な推移が続いている。

その背景には経常黒字が日本の機関投資家や
企業のMBOなどによる海外投資つまり資本収支の赤字により均衡化していると言ってよいだろう。

また2015年6月に125円越えの相場について「実効レートでみて過度の
円安状態にある」との黒田発言が心理的な壁として黒田シーリングを
形成していると言えよう。

実際120円以上では日銀に加えて輸入企業群から円安への悲鳴も出るし、
一方100円割れへの輸出企業そして政府の恐怖感も尋常ではない。

つまり100円~120円の水準はいたって居心地が良いということだ。



それでは今後の円相場の「大いなる安定」の行き着くところはどこか?

「大いなる安定」とはリーマンショック前の安定した成長を、時のFRB理事のバーナンキ氏が
こう表現したものだが、この安定はいつか崩壊するとの含意も有していたのかも知れない。

それでは何が相場の安定を覆す材料となるのかだが、
やはり米国の長期金利と日本の為替需給の動向ではないだろうか。

米国の長期金利(10年国債)については、過去1年2.1%~2.6%の
範囲で推移し目下は2.3%だ。

米国では成長率3%インフレ率2%が目標とされているが
インフレ率は現在1.5%水準にとどまっており、
金利引き上げに二の足を踏む理由でもある。

したがって今後政策金利が引き上げられ、長期金利が2.6%の天井を抜けて3パーセントになるかそれとも2パーセント割れになるかが注目される。

一方為替需給については原油価格との連動性が高く原油価格の
動向次第だ。

サウジアラビアやロシアによる減産体制が堅持されていることから
原油価格は50ドル台で推移している。

しかし今後はサウジの政変や今月末のOPEC総会次第で70ドルに達するかそれとも40ドル割れへと再度下落傾向となるのか?

つまり2018年の円相場は長期金利や原油価格に波乱が無い限り
100~120円での大いなる安定が続くのではないだろうか。


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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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