ナナ

6月のフランスゼミのテーマはエミール・ゾラの「ナナ」。

写実主義と言えばバルザックなどが主にブルジョアを描いたが
自然主義の代表のゾラは社会の底辺で暮らす人々にフォーカスした。

この作品は1879年に出版され日本にもその評判は伝わり
子規もエッセイに書き、特に永井荷風は強く影響を受けた。

荷風は1907年頃横浜正金の行員として
1年間リヨンで遊び、その時に強く感化されたようだ。



この小説は女優であり高級娼婦であるナナの
16歳から19歳の死去するまでの奔放で短い人生を描く。

実際3歳の子供を里子に出し(その父親は50歳以上だったようだ)、
オスマン通りのハンガリー人のパトロンにもらった家には
多くの貴族から少年までが通ってくる。

当時のパリは人口50万人余りで娼婦は4万人もいたとされ
その最上級に位置するのが高級娼婦と言われる人々。

その高級娼婦にもクルティザンヌ( Courtisane)とドゥミ・モンド(Demimonde)の
2種類があったようで、前者は宮廷につかえる女性と言う意味で、ルイ15世の愛妾・
ポンバドール夫人などもそれに入るようだ。

そしてナナは様々な男を手玉にとってその世界でどんどんのし上がって行く。

その魅力に多くの男が財産を失うことになるが、そのナナの姿は
まさに第2帝政(1852年から1870年のナポレオン3世の時代)
における文化爛熟の象徴的存在と言ったところだ。



小説はナナの天然痘による「グランドホテル」での病死で終わるが
一流ホテルでの死亡はある意味で彼女の成功を示唆しているともいえる。

しかしその死顔の醜さについてのリアルな描写はこの小説に
一環して通じるもので自然主義文学の代表作にふさわしいと言ったところだ。

とはいえ700ページの大作はちょっときつかった。



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セリーヌ



代田で行われているフランスゼミに月1度通いだしたが、
その往復に通る羽根木公園は強い陽射しに新緑が映える。

今月のテーマはルイ・フェルデイナン・セリーヌの「夜の果てへの旅」。

その自伝的小説は俗語、卑語にあふれた文章で読み辛く、
著者は医者で文学者ではあったものの下層階級出身で
そのせいか世を斜にみる人だったようだ。

第一次世界大戦で負傷し、その後西アフリカの植民地へ、さらに米国の
フォード社での労働などその前半生は苦労に満ちあふれていたようだ。



1932年に本作で文壇にデビューし、10歳年下のサルトルや
ボーボワールが傾倒したが、往復書簡によると彼らを歯牙にも
かけず手厳しく批判している。

反軍国主義、反国家主義、反権威主義、反植民地主義、反資本主義を
標榜するセリーヌの登場にフランスは全土を挙げて熱狂した。

いまもプルーストを筆頭に、カミュ、カフカ、サンテッグジュペリに次ぐ存在
として20世紀を代表する作家に挙げられていると言われる。

しかし正直な感想としては、あまり読みたくない作品であり、
親しくしたいと思わない作家と言えよう。

ともかくゼミの後は口直しに
下北沢はラ・ベファーナでのランチ会にも参加した。

いたって談論風発でどうもゼミでの文学論よりもここでのお喋りが
皆さんのお楽しみであるようだ。




パルムの僧院

「パルムの僧院」を読みだして早1か月。

フランスゼミの課題本であり読まなければならないのだが、
なかなかはかどらなくて往生している。

この作品はスタンダールが北イタリアに行き、
50日間にわたる口述筆記により完成させたものとされている。

あらすじはナポレオン戦争前後の貴族の青年と公爵夫人
および貴族の娘との恋物語。



舞台のパルム(パルマ)はロンバルジア平原の中心部にあり、
物語りはミラノやコモ湖にある別荘で進んで行く。

その時代のパルマ公国と言えば、小説と異なりナポレオンの妻で
夫の死後大公となったマリア・ルイーズが統治していたところ。

マリア・ルイーズはハプスブルク家の皇女で、子供の頃から
ナポレオンに2度もシェーンブルン宮殿を追われるなど、
ナポレオンを憎んで育った。

その後その相手との結婚を余儀なくされたのだから
気の毒な人だったと言えるだろう。

結局ナポレオンとの間に男子(ナポレオン2世)をもうけるが
夫への愛情は薄かったと言われるのもやむなしか。



ナポレオンがエルバそしてセントヘレナに流されて以降
ウイーンに戻るが、ウイーン会議が終わると間もなく
パルマに行き、同地の伯爵との間に極秘のうちに2人の子供を産む。

したがってパルマから数百キロも離れたウイーンの王室で暮らす
ナポレオン2世と疎遠になり愛情が薄くなるのも無理はない。

そのナポレオン2世と言えば、小公子然としてとても
可愛かったようで、その後りりしい軍人に育つ。

本人は父を尊敬しており、仇敵で母の実家であるハプスブルク家の人々の間で暮らすのは
つらかったかも知れない。

結局無理がたたり結核に侵され、僅か21歳の短い人生を閉じる。

このようにパルマと言えばナポレオン家にまつわるドラマが頭をよぎる。

スタンダールには悪いが「事実は小説よりも奇なり」と言う
格言が思い出される。



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フランスゼミ

仏文学とは何十年も無縁に暮らしてきたが、
「代田フランスゼミ」と言う読書会の存在を知り
早速体験入門した。

月1回の集まりで、毎月1冊を選び議論する。
もちろん原書で読んでも良いが、訳書でOKとのこと。

参加者は15人位でかつてボーボワールやサガンなど
に傾倒する女子学生だったに違いない女性陣が半分以上。

30年前にルソーの研究家の小林善彦東大名誉教授を中心に
始まったそうで、今はその弟子の田村さんがゼミ幹。



今回はラディゲ「ドルジェ伯の舞踏会」で、若い主人公と
人妻そしてその夫との三角関係がテーマ。

ちなみに20歳で夭逝したラディゲの「肉体の悪魔」を読み、
その早熟ぶりに筆者は驚いた記憶がある。

したがってゼミでの話は恋愛論におよんだのは当然で、
また大学のゼミと違うところか。

ということで文芸評論はだめでも恋愛論ならば何とかなるか。



ちなみに自らの学生時代の仏文学の遍歴を思い返してみたが、
印象に残る作家と言えば一に「モンテクリスト伯」の大デュマで、
大きく離れてロマン・ロランやスタンダールが続くと言ったところか。

今年の読書計画に依れば、ゾラやベルクソン、ミシュレ
それに「失われた時を求めて」のプルーストら。

どこまで理解と共感ができるか分からないが、1年限定で
これらの作家と付き合ってみようかと思っているところだ。

PS。

ところで3月のテーマであるジュリアン・グラック「シルトの岸辺」を
読んでみたところ、詩的と言うかシュールと言うか暗喩、比喩が
多くてよく理解できない。
やっぱり純文学は手に余る。

フランスでも有数の文学賞であるゴンクール賞を辞退したことで
有名な作家で、またサルトルに並ぶとも言われているらしいが、
その良さが分からない。

混迷の一年を送りそうだ。






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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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