日ロ平和条約

いよいよプーチン大統領が来日し、日ロ首脳会談が行われる。

日本では北方領土返還への期待が高まり、シベリア鉄道の
稚内までの延伸など夢のような話をメディアは
ぶちあげている。

そんなに簡単に領土問題が解決するなら、日ソ共同宣言から
60年間停滞した日ロ平和条約と北方領土問題は
とっくの昔にセットで解決されていただろう。



今様々な経済援助のオファーがロシアに対して投げかけられている。
まさに沖縄返還の際に繊維交渉で譲って、沖縄を譲り受けた
つまり「糸で縄を買った」ことの繰り返しにも見える。

とはいえロシアは米国以上に手ごわい相手だけに、すべて食い逃げされる
恐れがあることには要注意だ。

とはいえ欧米から経済制裁を受けているロシアの懐事情は厳しく
、極東開発で日本からの援助は垂涎の的と言ったところだろう。

はたして共同宣言に謳われたように、歯舞、色丹島の返還はいつ実現されるのか。


ロシアはもともとシベリアへの「東進」と、不凍港を求めての南下政策は
国家の宿願でもある。

したがってウラジオストクから太平洋、そしてアジアの海へ進出したいのは
やまやまで、どうしても日ロ平和条約を前に進めたいところだろう。

とはいえ高田屋嘉兵衛がロシアに連れ去られてから200年。

ロシアはそう簡単な交渉相手ではなく
これからも激しい攻防が行われるだろう。

今回の会談はその始まりだと思って、余り
過剰な期待を持たないのが良さそうだ。


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中国全人代

3月5日、北京において全人代が開幕した。

1年に1度の政治イベントで、今回は2016年ー20年の
政治・経済の運営方針となる第13次5か年計画を正式決定する
重要な大会と位置づけられている。

すでに習近平が国家主席に就任して3年半が経過し、
その権力は、政府、党、軍事と3部門に及ぶ。

この2年「腐敗撲滅」の名の下に繰り広げられた周永康や薄熙来との
権力闘争に打ち勝ち、首相・李克強との力の差を見せつけて
今や習近平は特別の地位に立ったようである

次世代候補が時に遡上に上ったりするものの、その権力集中
ぶりから、習近平が10年の任期を終えた後、特別な地位につくとの
憶測も飛び交う。



このように習近平は毛沢東以来の権力を手中に収めたようにも
見えるが経済問題については25年ぶりの低成長に喘ぎ、
ハードランデイングの恐れが拭えない中で、国有企業改革が
待ったなしとなっている。

2008年11月のリーマンショック時に発動された4兆元投資
による景気刺激策で国有企業が需要を無視した生産を行った。

現在においても、常に実需より3ー4割多い生産の力を
抱えているのが実情だ。

特に石炭、鉄鋼部門を中心に赤字垂れ流しを続ける
「ゾンビ企業」の整理と民間活力導入は喫緊の課題となっている。

しかし地方政府と銀行による支援を受けて生き延びる
「ゾンビ企業」についてはその改革を進めた場合、百万人規模の
失業者が発生するといわれる。

それでなくとも民族問題、テロ問題など様々な治安問題が
指摘される中で国内の緊張が高まる原因となるのは明らか。

しかし「民進国退」つまり民間企業の国有企業代替は不可欠であり、
失業者の増大を恐れるあまり、改革を先延ばしすることは
難しくなりつつあると言えよう。



すでに政府は「新常態」つまり投資から消費型経済への
移行を打ち出し既存体制にメスを入れる一方で国民に
起業を進めている。

しかし日本のキャラクターが平気でパクられるように知財権が
確立していないことから、今後起業インセンテイブが働き
経済活性化への起爆剤となるのかは疑わしい。

アリババ、テンセント、バイドウなどのIT関連企業の成功物語は
全くの例外にとどまるかそれとも今後陸続するのか
その分水嶺に立っていると言ったところだ。

このように中国経済の先行き不透明感が高まっていることが
年初来の国際金融市場を不安定化させているが、
中国経済の国際化が進む中で今後の経済運営の
かじ取りは注目されるところだ。



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春節

今年もまた春節がやってきて、日本の津々浦々が
中国人で溢れ返っている。

昨年の中国人訪日客数は500万人と全体の1/4程度に上るが
何よりもその購買力のすさまじいことは特筆されている。

銀座のLAOXなど大型バスが列をなしているのはいつもの通りだが
中国人の日本での休暇の過ごし方は様々。

かつて凍てつく釧路で白銀の世界を楽しもうとする中国人多数を
見て驚いたたことがあるが、近頃では自由が丘の美容院も中国人で
繁盛しているとか。

さらに和服のレンタルと記念写真のセットもはやっているようで、
それは京都で舞妓さんに扮して記念写真をとるといった日本人女性の
お株を奪う勢いなのだ。



このように日中の文化交流が進み、インバウンド需要が盛り上がって
旅行収支が1兆円も黒字になるなど結構なことではあるものの
果たしていつまでこのような特需が続くのだろうか?

中国経済はこれまでの投資主導から消費主導へと転換を図っているが
折からの資本流出に人民元安も加わって中国当局は頭を痛めており、
また世界経済に様々な影響を与えている。

このような状況で消費が国内から海外へ流出することは中国にとっては望ましい
状況とは言えず、中国当局が銀聯カードの海外使用について上限枠を設けるなど
資本流出を制限する措置を講じているのはその一環である。



ともかく年初からの金融市場の大荒れの背景には米国経済の先行き不透明感、
原油安などがあるが、加えて中国経済のハードランデイングへの懸念が大きい。

経済成長率については6%後半などと言われているが、今時中国当局の
発表する経済指標を信じるものは共産党指導部にもいないのが実情だ。

果たして中国はソフトランデイングできるのか。

つかの間の春節の休暇で一息ついているのは中国人よりも
日本はじめ世界の金融関係者というところだ。

春節が明ければ3月5日から全人代が予定されるなど
中国サイドから何が飛び出してくるのか分からない。



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中国コンプレックス

1月4日の東京株式市場は振り袖姿もチラホラするなど
築地の初セリと同様にお祝い気分でスタートしたのはいつもの通り。

しかし1時間の時差で開いた中国の株式市場が暴落し
導入したばかりのサーキットブレーカーが稼働するなどしたことから
対岸の日本ではお屠蘇気分も吹っ飛んだ。

今年はこれまでにも増して中国の株価・景気の動向に左右されながら、
また中国共産党の顔色も見ながら一喜一憂することになるのだろうか。

いよいよ中国の脅威を感じずに日本の存立そして日本人の生活は
成り立たなくなってきたのかも知れない。



中国に対する日本人の気分の変遷について日本総研の
寺島実郎氏は次のように分析している。

①1914年から18年の第一次世界大戦をはさんだ「運命の5年間」
 において、それまで屈折して蓄積されてきた中国に対する劣等感を
 優越感に反転させた。

②その後、第2次世界大戦での敗戦を機に、経済復興に専念した結果
  経済大国に成長したことに大きな自負心を持った。

③しかし、2010年に中国に国内総生産(GDP)で抜かれ、
 14年には日本の2倍を超えた中国の背中は見えなくなった。
 
 さらに1人当たりGDPでSPRや香港に抜かれ、もはやアジアで最も
 豊かな国ではないという状況に、心穏やかではなくなった。

④さらに中国の拡張的動きが重なって、中国に対する平常心を失った。

⑤この結果、米国と組んで中国の脅威を抑えていくしかない
 という結論に行き着いた。
  
 しかしこの戦略は中国と日本双方を等距離におく米国と
 同床異夢であり的外れだ。



今や日本が中国と比肩できる存在と思っている日本人は少なくなった。

優越感が劣等感へと変異したとの寺島氏の指摘については
やや自虐的でありまだそこまで日本人の心は余裕を失っていないと思いたいが。
(そう言えば寺島氏は民主党の外交ブレインだった。)

しかし明らかに軍事・経済面で中国のパワーに圧倒されているのは確かだ。

新アベノミクスでは足元のGDP500兆円を2020年には
600兆円とすることを目標として掲げている。

その具体的根拠のあいまいさについては言うまでもないが、
中国からの爆買いにより10兆円近い増加を見込むなど
中国パワーを他力本願していることには苦笑するしかない。

片や領土問題、歴史問題で強気のポーズをとりつつ、
その購買力を熱烈歓迎する日本そして日本人の二面性は
コンプレックスの裏返しと言えるかも知れない。

優越感から一転して劣等感へと気分が落ち込んだ日本。
中国に今後どのように接するか思案のしどころだ。

やはり優越感や劣等感に基づく「対立」よりも
対等意識に基づく「共生」の道を探ることか。


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ひとつの中国

1949年に国民党・蒋介石が共産党との内戦の後
大陸から台湾へと敗走して以来66年が経過した。

台湾トップは蒋介石から蒋経国、李登輝、陳水扁、馬英九と変わり
中国も毛沢東、ト小平、江沢民、胡錦濤そして習近平へと変わった。

そして11月7日、シンガポールで習主席と馬総統による
中台首脳会談が初めて行われた。



今回の会談は、第三国が会場に選ばれ、会場に両国旗は
掲揚されず、また互いを「主席」「総統」と呼び合わず「先生」と呼んだ。

「先生」とは「おじさん」「Mr.」と言ったもので、レストランの店員や
タクシーの運転手などにも使われるものだ。

政治的な対立の一方で経済交流が進んでいる現在のお互いの
微妙な立場を表しているといえるだろう。



今回の会談は両者それぞれにメリットがあったようだ。

南シナ海さらに東シナ海で米国との対立を深めている中国にとっては、
台湾海峡での懸念を薄め米国をけん制したかった。

一方2008年から8年間総統に在職し、来年1月の選挙では
民進党に政権移譲が確定的な国民党馬氏にとっては、
中台接近のレガシーを残したかったとされる。

どちらにしても今回の会談の背景には「ひとつの中国」つまり
「大陸と台湾はひとつの中国に属し、不可分である」との考えがある。

ただその解釈はそれぞれ。

つまり中国は「中華人民共和国」が、そして台湾は「中華民国」
を正統政権と主張したままだ。

そしてそれぞれの認識する「現状」は全く異なるが、
現状を維持したままで経済交流を進めようとしている。



日米は公式発言としてこの会談を歓迎しているが、実態はやや微妙だ。

尖閣で台湾と領有権問題に直面している日本では、台湾と親しい関係を
築いた岸元首相の孫安倍首相は台湾に親近感を感じているようでもある。

一方米国も台湾が中国へなびくことを警戒もしている。

さらに来年1月の選挙で民進党政権が誕生すれば再び
台湾独立論が高まることとなり、中台は緊張をはらむことになる。

なかなか会談をしたからといって一筋縄では行かないということか。


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プロフィール

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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