FRB議長人事

8月末のジャクソンホールでの経済シンポジウムにおいてドラギECB総裁とイエレンFRB議長の発言が注目された。

しかし今後の金融の舵取りについて特段の示唆はなかったことに
市場はがっかりした。

一方で二人ともトランプ大統領への批判をにじませた点が特筆される。

ドラギ総裁は米国第一主義を掲げて保護主義に傾斜する大統領に懸念を示し
国際機関の強化と自由貿易の意義を訴えた。

またイエレン議長はトランプ大統領がオバマ大統領が進めた
金融規制に反対を唱えていることに懸念を示した。

実際米国の金融制度は20世紀後半から金融規制緩和を進めたせいで、
投資家の強欲をあおることになりリーマンショックにつながった。

従ってこの10年はその反省にたって金融改革法を成立させて、
より規制を強めてきた。
その過程でイエレン氏はボルカールール策定に副議長として中心的役割を果たした。

つまり金融規制に関しては反対するトランプ大統領と推進する
イエレン氏は水と油と言っても良い関係なのだ。



もともとトランプ大統領は低金利が大好きと言われるが、
イエレン氏への批判を頻繁に繰り返してきた。

しかし選挙戦途中からバーナンキ前FRB議長の緩和策を支えた
イエレン氏を持ち上げはじめ今や「尊敬する」とまで言う。

来年2月のFRB議長の任期到来を前にして10月ごろには大統領が
次期候補者を指名するが、ここにきてイエレン氏続投の可能性が急浮上している。



FRB議長人事については、8月までその本命にあげられていたのが、政権内で
経済問題全般を仕切り、大統領の全幅の信頼を得ていたゲイリー・コーン
国家経済会議(NEC)委員長。

若いころはゴールドマンの商品子会社の穀物トレーダーだったとかで
トレーダーがFRB議長になるなんて、と金融世界の常識が覆ると見られていたのだ。

しかしユダヤ人であり大統領の人種問題への偏見に強く異を唱えたことから、
大統領と決定的に対立しもはやFRB議長の芽は無くなった模様。

その他の候補と言えばテーラー・ルールを考案したことで有名な
ジョン・テイラースタンフォード大教授。

ただこの人の提唱するルールはインフレやGDPと言った経済変数にしたがって
政策金利が計算・決定されることになり、大幅利上げは避けられない。

つまりテーラー氏はタカ派ということで、政権としても
ウオール街にとっても都合が悪い人事ということになる。

あれやこれや考えると結局イエレン氏の再任で落ち着くように見える。

過日はイバンカ氏がイエレン氏と朝食をともにしたり、ムニューシン財務長官が
候補者リストを大統領に渡したと伝えられるなど政権内の動きは激しくなるばかり。

果たしてトランプ大統領の決断は?






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米国の混乱

古くて新しい問題である人種問題がクローズアップされている。

人種差別反対を唱える人々を「オルト・レフト」(極左主義者)と呼び
白人至上主義者を擁護するトランプ大統領。

続いてジョージ・ワシントンもまた奴隷主だったとして
自らの姿勢を正当化しようとしている。

一方でマンデラ元南ア大統領の人種差別反対の言葉を引用したブログを書いたオバマ元大統領には700万もの「いいね」が殺到したとか。

いよいよアメリカ社会は分断の危機に直面することになったと
米国の知識人は警戒警報を鳴らすのだが果たしてどうなるのか。



それにしてもトランプ大統領のツイートはあいかわらず激しい。

金正恩との威嚇と挑発の応酬がようやく一段落したかと思えば、
今度は国内問題で国民を混乱に陥れている。

先日就任したばかりのケリー首席補佐官は、今後ホワイトハウスの秩序を
取り戻すために権限を自らに集中し、そしてトランプ大統領のツイートも
管理すると言ったが早々とあきらめ顔だ。

そしてホワイトハウス内の混乱は止まるところを知らず、オルトライトの
バノン上級顧問と元将軍のマクマスター補佐官との安全保障についての対立は激化。

さらに国家経済会議委員長で経済問題のトップとして政権を牽引する
ユダヤ人のコーン氏が人種差別に反対し辞任も現実味を帯びている。

さらに民間企業のトップで構成される大統領への2つの助言機関は
辞表をたたきつけるCEOが続出して、大統領が解散を命じるなど
経済界との関係も混乱を来している。



今や米国大統領そして米国政治の権威は失墜するところとなっている。

ロシアゲートも捜査が少しづつ核心に迫りつつあるようで
いよいよトランプ政権は破綻への道を進みつつあるように見える。

とはいえ大統領を罷免することなどほとんど不可能とすれば
米国は次回の大統領選までの3年余り混迷状態を深めることになるだろう。

金融市場はそろそろ夏の休暇から戻る季節になったが、
ぐらつく米国政治を見て不安定化するのではないか。

これまで経済も政治も決して良い状態ではないのになぜか史上最高値を推移する
米国株式市場と高値圏にある米ドルの大幅安が予感されるのだが。

秋は波乱が付き物なのだが、
いつも通りの杞憂に終わるのだろうか?


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ハイテク

米国株価が21、000ドルと史上最高値の水準を推移している。

米国景気はかつての輝きはなく低金利政策に支えられているのは
否めないが、特筆されるのはハイテク5銘柄の堅調ぶりだ。

ハイテク5銘柄と言えばアップル(時価総額89兆円)、アルファベット(グーグルの
親会社。75兆円)、マイクロソフト(60兆円)、アマゾン(53兆円)、フェイスブック(49兆円)。

つまりこの5社が世界の時価総額の上位を占めているが、
これらの製品はいつのまにか身の回りに存在するものばかり。

これらなくしては生活が成り立ちづらくなっており、そして大半は
四半世紀以上前には影も形もなかったものたちである。



そしてこの5社が毎日何らかの話題を市場に提供しているが
先日はアマゾン株が1000ドルに到達した。

20年前の上場時に2ドルだったものが今や500倍になった、
つまり1万円投資していれば500万円になったということだ。

当初はネット通販特に書籍でスタートしたが今やなんでも取り扱い
さらにクラウド事業など多岐にわたっている。

一方アップルについては時価総額がうなぎ上り。

投資家ウオーレン・バフェット氏が顧客のローヤリティの高さに注目し
アップルを買い、IBMを売った。

業界の栄枯盛衰の激しさを物語るが、確かにアップルを使った人は
必ずアップルを買うと言う習性が強いのも、良い製品を作るからだろう。



このように世界のトップ企業の顔ぶれは大きく変化し、
かつての常連だった自動車産業も顔面蒼白。

GMそして電気自動車のテスラが6兆円程度であることから
ハイテク企業の隆盛は明らか。

ともすれば儲けすぎが指摘されるトヨタでも20兆円ぐらいと
米ハイテク企業の1/3-1/5程度に止まる。

製造業よりも非製造業が主流となる社会において、ハードよりも
ソフトが儲かる時代ではあるもののPERは100倍を超えると聞けば
(米主要企業の平均は17倍)少し行き過ぎのような気もするが。


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トランプ節

4月末のドゥテルテ比大統領との電話会談でトランプ大統領は、

「核兵器を持った頭のおかしい男をこのように野放しにしてはおけない。
我々は大きな戦力を持っている。彼の20倍だ。
だがそれを使うことは望んでいない。あなたたちは大丈夫だ」

とアジアの安定を保障する発言を行った、と報じられている。

とはいえその直前には、「金正恩は大したやつだ。いつでも会う」などと
発言していたことからすると、相変わらずトランプ節は気まぐれで、
ぶれやすくついて行けない感じだ。



そのトランプ大統領は目下中東、ローマを経由してNATO、
そしてG7へと外遊の真っただ中。

中東では反イランの旗の下アラブとイスラエルの協調を
訴えているが、この方針は果たしていつまで堅持されるのか。

すでに米国はじめ西側の企業はイランへの再投資を進めているが、
トランプ節にはハラハラし続けることになるだろう。

一方選挙期間中に「メキシコの壁」や「環境問題」について
ローマ法王から批判が出て反目したが、今回は30分におよび会談。

地球規模の環境問題についてローマ法王の懸念を理解したようで
今後前向きに対応すると言った趣旨の発言をしている。
とはいえこの発言をどこまで信じてよいやら。



ともかく外遊はいちおう無難なデビューを切ったようだが
果たして週末のG7でどんな評価をえる事ができるのだろうか。

国内に帰れば目下ロシアゲートが真っ盛りでストレスが続く。
したがってホワイトハウスでは側近をどなりつけているとか。

頼れるのはクシュナー・イバンカ両氏の親族だけの模様で
果たしてこの難局を乗り切れるのか分からない。

ともかくトランプ大統領の不規則発言、つまりトランプ節の
炸裂はまだまだ続きそうだ。


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ロシアゲート

4月23日の仏大統領選以降「マクロンラリー」と言われるように
ユーロが対ドルで1.06から1.11へ、そしてユーロ円が115円
から125円へと急上昇。

お陰でドル円でも108円台から114円台まで円安が進んでいたが
ここにきてトランプ大統領の周辺がざわついて円高へ反転し、今朝は
110円台となっている。

もともとトランプ大統領の政策運営については懸念されてきたが
公約の実現による米国経済再生の夢を追う動きが勝り
ドル高、株高が高進してきた。

今回の「ロシアゲート」の発端はFBIのコミ―長官の解任で、
その真相はフリン元補佐官への捜査中止に圧力をかけたこと。

さらにイスラエルから提供されたISの機密情報をラブロフ露外相に
提供したが、この利敵行為に民主党のみならず共和党も驚いては
あきれ果て、弾劾の現実味が語られはじめた。

実際ISに潜入している情報源の安全が侵される問題であり
情報が集中する最高司令長官への信頼感がぐらついている。



弾劾裁判については憲法第1章第2条5項において「訴追権限は下院に属し」
「裁判を行う権限は上院にある」とされ、その2/3の賛成で有罪となり罷免されることになる。

これまでについては、ニクソン大統領が辞任に追い込まれた例がある。

これは「ウオーターゲート事件」と呼ばれるもので、自らの不法行為を
捜査していた特別検察官を解任し、司法長官を辞任させた事件である。

同大統領は訴追されることが必至となったことを受け急きょ辞職に至った。

と言うことでトランプ大統領の今後が注目されるが、もともと支持率が50%以下で
たまたま不人気のクリントンが相手だったから当選しただけとも言われるだけに、
いつまで大統領職を続けることができるか。

中間選挙を1年半後に控え、共和党でははやばやとペンス副大統領に
首をすげ替えようかとの思惑も台頭しているようだ。



トランプ大統領辞任ともなれば公約に挙げた減税と1兆ドルの
インフラ投資が画餅になるということで、株価の暴落とドル売りの嵐
との見方が強まる。

しかし国民の信頼の厚いペンス副大統領が大統領になれば
これはこれで好材料で、ドル買い・株高だとの見方も存在する。

金融市場は本当に気まぐれで一体どちらなんだと考えてしまう。
ともかく円相場は、案外早くに105円に到達するかも知れない。


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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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