情愛大使

「渡辺淳一を愛読しています。」
何故か口にするのを少し憚り、その声も小さくなる。


西南の役で負傷した二人の男の生き様を描き
直木賞を受賞した「光と影」は骨っぽい作品だった。

また日本で初の女医となる荻野吟子を描いた
「花埋み」も秀作。流石に元医者だと思わせてくれた。

いつの頃からか作風が変わりテーマが恋愛物となった。
「失楽園」、「愛の流刑地」など通勤電車で新聞小説
を熟読するサラリーマンの姿が目立ったものである。


今般、平安王朝を題材にした「天上紅蓮」(てんじょうぐれん)
が単行本となった。月刊・文芸春秋で連載されていたものだ。


権力の頂点にあった62歳の白河法皇と14歳の待賢門院との恋物語り。
年齢差48。「情愛こそ生きる源だ」とする著者の願望なのだろう。


法皇の愛情は深く、崩御までの15年間関係は続く。
愛する女性に最高の地位を与えたいとの気持ちが芽生える。

孫である鳥羽天皇の后とし、更に自分の子供を産ませる。
これが物語のあらましである。

この男子は後に崇徳天皇となる。
鳥羽天皇と崇徳天皇の関係は、一応親子ながら極めて複雑だ。

父・法皇から見れが孫とひ孫ながら、実は孫と子。
母・待賢門院から見れば方や夫で方や不義の子。

祖父と妻の行いについて、鳥羽天皇が面白くないのは当然。
法皇亡き後、しっぺ返しが来たのは当然である。


小説の後の話であるが、保元の乱で後白河天皇派に敗れ
崇徳天皇(院政の時代で既に上皇になっていた。)は
讃岐に配流される。


長い天皇家の歴史の中で配流の憂き目に遭うのは僅か二人。
その後、都では種々事件が発生し、崇徳院怨霊と恐れられたらしい。


不幸な46年の一生だが、歌人であり、西行も讃岐を訪れている。
代表歌は「瀬を早み岩にせかるる滝川のわれても末にあわむとぞ思う」。


川の水は岩で分かれてもまたひとつに合流する、となる。
要するに、今は恋人と分かれてもまた会えますよ、という意味。


御年77歳の渡辺氏。「70を超えても女性への好奇心は尽きない。」
と至って元気。多分今まで通り、銀座あたりのクラブで
取材活動をされているのだろう。



外国で人気の作家と言えば、村上春樹、谷崎潤一郎、大江健三郎。
このトップ3に続くのが同氏のようで、
中国では「情愛大使」と呼ばれているとか。


売れ筋は「花埋み」とのこと。日本文化の大伝道師なのである。
案外、外国での評価の方が国内よりも高いかもしれない。




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プロフィール

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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