金融正常化

日銀の金融政策と言えば、市場関係者が異常なぐらい関心を示す一方で、
一般の人が限りなく無関心であるというそのギャップに特徴があると言えよう。

黒田総裁が就任し2%の物価目標達成を掲げてすでに4年が経過し、
その効果への疑問が日増しに高まる。

有効求人倍率が1.5倍に接近し息の長い景気回復が続いていると言われるものの、
コアインフレ率は相変わらずゼロ%近辺でデフレ脱却の兆しは見えない。

つまり給料上昇が確認されない中でもはや2%の物価目標にどの程度の意味が
あるのかわからなくなった。

それでもその目標達成にこだわり、年間80兆円のペースでの
長期国債の買い入れを継続することの意味も同様である。

さらにREITやETFなどの購入を続けて金融市場を買い支えているが、
日銀の資産が膨張し財務内容が悪化しているのも明らかだ。



このような環境下において15~16日に日銀は金融政策決定会合を開く。
しかし現状のイールドカーブ操作を軸に据える量的緩和政策に変更はなさそうだ。

とはいえ日銀も現状認識を変えつつあるようで、
そのひとつが「円相場と輸出」の関係についてだ。

従来その因果関係については「Jカーブ効果」があり、円安が進むと
まず価格効果が出て輸入が増加し、その後輸出が増加し貿易収支の黒字化が進むと言われてきた。

しかし現在は4年にわたる円安にも拘わらずその輸出数量は増加しておらず、
その原因として海外への生産移転によるものだとの判断を日銀は下した。

すでに40年を超えて円高対策の一環として日本企業は生産の海外移転を
進めてきた以上、
かつて教科書で習った「Jカーブ効果」が薄れるのは当然であり、
日銀が見解を変えるのも今更と言ったところ。

その真意は「円安が日本の貿易黒字の増加ももたらしていない」ことを婉曲に
日銀は言っているわけで、結局米トランプ政権による対日赤字の原因としての
円安政策への批判をかわそうとの作戦の一環と言うことだ。



米国ではテーパリングをすすめ出口戦略へと突き進んで1年半。

そしてECBもその開始を目前にしているが、日銀の金融政策
とくに出口戦略については表向きその素振りは一切見せない。

どこまでも現状の緩和策を進めようと自信家の黒田総裁の腹は固まっているようで、
このまま任期二期目に突き進みそうな気配も漂う。

とはいえ現在の変動相場制下における金融政策は、
他国からの影響を排除して独立的に運営することが難しい。

従って教科書の教える通り日銀が海外の中央銀行に
引きずられることは免れない。

黒田日銀の政策の狙いは本来「円安政策」であるが、
またその効果が薄れてきた以上、量的緩和策を続ける意味も減じているのではないか。

そろそろ「クロダノミクス」の看板をおろして金融政策の
正常化を図る時期に来たのではないだろうか。

金利がゼロ状態では金利調節による経済調整ができないだけに
金融正常化つまり金融政策の伝統的手法への回帰は最優先課題だと
思うのだが。


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プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

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