FC2ブログ

きことわ

5年前に弱冠26歳で芥川賞を受賞した朝吹真理子氏の
「きことわ」を読んだ。

若い女流作家の登場と評判になったが題名が意味不明でもあり
読む機会なく過ぎていた。

最近良い作品だと薦めてくれる人がいたので読んでみた。



この短編は貴子(きこ)と永遠子(とわこ)が25年ぶりに葉山の別荘で
再会する話。つまりふたりの名前の頭二文字が題名の由来だ。

33歳と40歳になった二人の女性が9歳と15歳だった頃の記憶を辿り、
また意識は夢とうつつを往還しつつ、まさに時を主題にしながら
静かな夏の一日を描いている。

内容は静謐、文章は透明で饒舌でもなく舌足らずでもなく
言語感覚に優れた作家であることは一目両全だ。

綿矢りさ氏は文春がアイドル路線に切り替えたお陰で選出された、
そして作品は水準以下と酷評されて、第2作がなかなか書けなかった。

果たしてこの朝吹氏は綿矢氏との違いを示すことができるのか?



朝吹氏は受賞後祖父の妹に当たる朝吹登水子氏についての
思い出をたびたび聞かれたということだが、苗字が一緒とはいえ
法事で2、3度あっただけで答えに窮したとか。

その辺りのことについてはノンフィクション「朝吹家を生きる」
(石村博子著)に詳しく記されている。

それにしても朝吹家は初代、2代目が実業家だったが、
それ以降は音楽家や建築家、仏文学者など芸術的に多彩な人が多い。

その秘密は富や名誉よりも自立した精神を養うことを
優先させる家訓にあるようだと石村氏は結論づけていた。

「自立した精神を追い求める」とはとても説得力を感じるが、
いまさらその精神を学ぼうとしてももはや手遅れか。



.
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

斉藤洋二

Author:斉藤洋二
銀行・生命保険会社にて
長く為替・投資業務に携わった。

特にホンコン、パリ在住の際には
中国・アジア・欧州・アフリカ
各国を見て歩いた。

歴史・料理・音楽に興味がある。

「ネクスト経済研究所」代表

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR